イソップ物語「96-羊飼いの子供と狼」


朗読「96-羊飼いの子供と狼.mp3」4 MB、長さ: 約 4分 12秒

(96)羊飼ひつじかいの子供こどもおおかみ

 あるむらに、一人ひとり羊飼ひつじかいの子供こどもがありました。そして、この子供こどもは、毎日村まいにちむらちかくの野原のはらて、沢山飼たくさんかっているひつじばんをするのが仕事しごとでした。
 あること、この羊飼ひつじかいの子供こどもは、いつものとおりて、ひつじばんをしていましたが、
おおかみひつじりにたといって、むらものをおどかしたら、どんなに面白おもしろいだろう。ひとつだましてみてやろう。」
と、わるいことをおもいつきました。
 そこで、羊飼ひつじかいの子供こどもは、おおきなこえげまして、
おおかみだ!おおかみだ!」
と、いかにもおおかみたようにてました。すると、これをきつけました、むらひとたちは、
「また、わるおおかみたぞ!そら、はやって退治たいじしよう。」
と、てんでに武器ぶきげて、大急おおいそぎで野原のはらけつけたのでした。
 ところが、野原のはらてみると、おおかみらしいけもの一匹いっぴきもいず、ひつじはいつもどおり、たのしそうにくさっていますので、むらひとたちは、なになにやらわけわからず、
「おいおい、おおかみ一体いったいどこにいるんだ、どっちへったんだ。」
と、子供こどもいたのでした。
 一方いっぽうれいわる羊飼ひつじかいの子供こどもは、むらひとたちが大勢おおぜい一生懸命いっしょうけんめいけてるのをて、たたいて面白おもしろがっていましたが、やがて、むらひとたちが近寄ちかよって、おおかみはどこにいるかときましたので、
おおいにご苦労様くろうさま!あははは。」
と、おおきなこえわらうのでした。
 しかし、むらひとたちは、こどもに一杯食いっぱいくわされたとはがつきません。おおかみはもうげてしまったものとおもって、
「もうげてしまったなあ、そいつはしいことをした。今度来こんどきたら、大急おおいそぎでらせてくれよ。すぐけつけて、退治たいじしてやるから。」
と、一同いちどうかえしました。羊飼ひつじかいの子供こどもは、うまくいったものですから、もう面白おもしろくてたまりません。それからこんなふうに、二度三度にどさんどむらひとたちをだましましたが、いつまでもわるいことがれずにいるものではありません。むらひとも、
「ああして何度なんどぶが、いつったって、おおかみがいたことはない。こりゃあの小僧こぞうに、すっかりだまされていたんだぞ。」
と、気付きづいてしまいました。
 それからもなくのことでした。今度こんどは、本当ほんとうおおかみてきましたので、子供こども大変たいへんおどろき、一生懸命いっしょうけんめいになりまして、
おおかみだ!おおかみだ!」
と、怒鳴どなりたてました。
 しかし、むら人達ひとたちは、いつものいたずらだとおもって、
「また、いたずらものがだまそうとしているな。」
と、みみにもめてくれませんでしたので、おおかみは、おもうままに、かたぱしからひつじってしまって、舌鼓したつづみをうちながら、悠々ゆうゆうげてったのでした。