イソップ物語「92-人間と馬と牛と犬」


朗読「92-人間と馬と牛と犬.mp3」3 MB、長さ: 約 2分 46秒

(92)人間にんげんうまうしいぬ

 あるふゆ、ひどい北風きたかぜのあれる夕暮ゆうぐれでした。一頭いっとううまと、一頭いっとう牝牛めうしと、一匹いっぴきいぬとが、ってたびをしていましたが、とてもさむく、れかかりましたので、人間にんげんいえりまして、一夜いちや宿やどもとめました。
 すると、人間にんげんは、こころよくこのねがいをいてやりまして、
「きっとさむいだろう、からだれているからあたたまるがいいよ。」
って、かんかんをおこして、あたためてやりました。そして、おなかもすいているだろうからとって、うまにはカラスムギを、牝牛めうしには枯草かれくさを、いぬには夕食ゆうしょくあまりをけてやったのでした。
 そうして、うま牝牛めうしいぬとは、そのよるを、気持きもちよくごしまして、その翌朝よくあさかぜおさまりましたので、挨拶あいさつをして、出発しゅっぱつすることとなりましたが、その間際まぎわになって、主人しゅじん好意こういになにかおれいがしたいというので、一同相談いちどうそうだんしまして、
うまと、牝牛めうしと、いぬ三匹さんびきで、それぞれ人間にんげん一生いっしょう分配ぶんぱいし、そのひとつずつに、自分じぶんたちのまえ天性てんせいを、けてやろう。」
と、めたのでした。
 そこで、三匹さんびきは、くじきをしましたところ、うまは、青年せいねん時代じだいりましたから、そこで人間にんげん青年せいねんは、うまのように元気げんきさかんで、おさえてもおさえても、まわるようになったのでした。
 それから、牝牛めうしには、中年ちゅうねん時代じだいたりましたから、人間にんげん中年ちゅうねん時代じだいには、どっしりといて、力一ちからいっぱいにはたらくようになりました。
 そして最後さいごに、いぬは、老年ろうねん時代じだいたりましたから、道理どうりで、人間にんげんは、としりますと、おこりっぽく、癇癪かんしゃくもちになって、いぬのように、自分じぶんなぐさめてくれるものにはなつきますけれど、自分じぶん大事だいじにしなかったり、自分じぶんいやがったりするものをますと、きたがるようになったのでした。