イソップ物語「87-子羊と狼」


朗読「87-子羊と狼.mp3」3 MB、長さ: 約 3分 08秒

(87)子羊こひつじおおかみ

 一匹いっぴきひつじが、仲間なかまにはぐれたものですから、うろうろとしていますうちに、おおかみにおいかけられたのでした。
 はじめのうちこそ、子羊こひつじ一生懸命いっしょうけんめいげてはみましたが、なにしろ、大人おとなのおおかみですから、たちまちいつかれそうになったのでした。
 このとき子羊こひつじは、もうどうしても、つかまるよりほか仕方しかたがないとてとりましたものですから、早速さっそくのとんちをきかして、くるりとうしろをきまして。おおかみかい、
おおかみさん、わたしは、もうどうしても、あなたにべられるよりほかはないと覚悟かくごをいたしました。で、そうまってしまったら、もうさきながくないいのちですから、せめて、最後さいごにぎやかにおどってにたいとおもいます。まことにすみませんが、おおかみさん、あなたは、わたしのために、ふえいてくださいませんでしょうか。一生いっしょうのおねがいですから、どうかおください。」
と、たのみますと、おおかみも、ごちそうになるまえに、たのしいおどりをられるのですから、もとより異存いぞんのあるはずはなく、早速承知さっそくしょうちしてくれたのでした。
 さて、おおかみは、しずかにふえりまして、ピーピーとはじめますと、子羊こひつじは、っていたとばかりに、そのふえふしにつれまして、面白おもしろく、おどりだしました。
 そして、おおかみは、ふえくにつれて、だんだんと面白おもしろくなってきましたものですから、一心いっしんになってきますと、子羊こひつじ子羊こひつじで、またさわがしくおどったものですから、だんだんとにぎやかになってたのでした。
 すると、ひつじむればんをするよう、その役目やくめにあたった神様かみさまが、あんまりにぎやかなおとがするので、不審ふしんおもって、やってきますと、この有様ありさまですから、神様達かみさまたちは、おおかみ姿すがたますと、
「こらこら、なにをしているんだ!」
と、はらったのでした。おおかみは、神様かみさまてられて、さもいまいましそうにしましたが、やがてはしりながら、うしろをいて、
かんがえると、おれ本当ほんとう馬鹿ばかだったよ。ふえなんかいていないで、さっさとおまえべてしまえばよかった。」
と、子羊こひつじいました。