十五少年漂流記(36)

朗読「十五少年8-4.mp3」9 MB、長さ: 約 10分 14秒

19.二人ふたり人質ひとじち、とどろく砲声ほうせい

あとになってかんがえてみると、これは彼等かれら計略けいりゃくだったのだ。悪人あくにんのやりそうなにくむべき計略けいりゃくだったのだ。つまり、ロック、コープ、バイクの三人さんにんで、陥穽林かんせいりんなかから偵察隊ていさつたい攻撃こうげきさせて、そのほうらせておいて、一方いっぽう首領しゅりょうのワルストンはじめ、ブラント、ブルークの三人さんにんは、ニュージーランドがわめんした物置ものおき洞穴ほらあなから不意ふい侵入しんにゅうしようとしたのである。
意外いがい災難さいなん!そういうなかにも、イバンスはいて指揮しきをとった。まず、グロース、ウエッブ、ガーネットの三人さんにんに、ドノバンの看護かんごをさせ、自分じぶんは、ゴルドン、ブリアン、サービス、ウイルコクスの四人よにん近道ちかみちもとめて、一直線いっちょくせんに、洞穴ほらあなほうけつけた。
けつければ、もうおそかった。ワルストンは一人ひとり少年しょうねんうばってげようとしている。うしろからケイトが必死ひっしいすがって、これをかえそうとしている。ちいさいジャックがさらわれたのだ。
つづいて、洞穴ほらあなからているのはブラントで、これはコスターを小脇こわきかかえている。バクスターはブラントをいかけてうばかえそうとしていたが、数歩すうほのところで、たおされた。けれども、モコーやそのほかの少年しょうねん姿すがたせない。どうなっているかからない。
ワルストン、ブラントはもう川辺かわべまではしってく。かわではブルークがボートでけている。いまにも、人質ひとじちをボートにもうとする。もし、この二人ふたり人質ひとじちが、彼等かれらちたら、その結果けっかはどうであろう。
イバンスはぞーっとした。だが、二人ふたり子供こどもきずつけるのをおそれて、発砲はっぽうすることができない。かれぎしりをした。むなしくさけんだ。じだんだんだ。
そこへ、まっしぐらにはしってったのは、猟犬りょうけんフワンだった。フワンはいきなり、ブラントののどをめがけてびついた。みついた。さすがのブラントもたじろいで、コスターをうでからとした。
そこへ、洞穴ほらあななかからおどらせてはしおとこは、だれか?とると、ほかならぬフホーベスだった。かれはワルストンに味方みかたをするのか?
そうおもったみんなのまえで、ものわず、いきなりワルストンにびかかった。そして、ジャックをうばかえそうとした。
ワルストンはこと意外いがいにびっくりして、おもわずジャックをはなした。同時どうじに、すらりとナイフをいて
裏切うらぎものめ!」
こえとともに、フホーベスの脇腹わきばらを、ぐさりとした。
それはほんの瞬間しゅんかん出来事できごとであった。イバンスと、ほかの少年達しょうねんたちは、七八十しちはちじゅうメートルはなれていたので、くだしようがなかった。
ブラントは、フワンの猛烈もうれつ攻撃こうげきえかねて、ボートのなかった。ワルストンは、ブラントがコスターをはなしたのをると、ジャックだけはでもさらっていこうと、うでながばした。その瞬間しゅんかん、ジャックは、かくったピストルをし、ワルストンにかって、轟然ごうぜん一発いっぱつってはなした。
ねらいははずれることなく、ワルストンのむねなか射抜いぬいたので、かれはよろよろとボートのなかころんだ。ボートのなか二人ふたり悪者わるものは、ワルストンをたすれると、こうぎしをさしてした。
すると、たちまちはげしいおと洞穴ほらあなくちからこった。
と、みるみる、三人さんにん悪人あくにんせたボートはまっしろけむりをあげ、彼等かれらさけごえさえはっしないで、水中すいちゅうころちてえなくなった。
これは、モコーが物置ものおきから大砲たいほうったのである。
ああ、かみよ。少年達しょうねんたちはついにった。この無垢むく少年達しょうねんたちは、最後さいごむずかしいたたかいをも見事みごとけたのだーー。
いまや、セベルンごう悪者わるものたちはことごとくほろび、わずかに陥穽林かんせいりんなか見失みうしなったロック、コープの二人ふたりのこすのみとなった。
ブリアンはドノバンの担架たんかところき、しずかに洞穴ほらあなはこれた。
イバンスは、フホーベスをおなじく洞穴ほらあなはこみ、二人ふたりならべて、みんなで看護かんごをした。
そのよる夜中よなか、みなまくらもとにあつまって、看護かんごをしたが、ドノバンはやはりこん睡状態すいじょうたいにあるので、ケイトはニュージーランドがわのほとりのはんんできた。これをくすり使つかって、ドノバンの傷口きずぐちつつんでやった。ケイトはアメリカまれで、アメリカの手当てあてによってそうしたのである。
フホーベスは急所きゅうしょされたので、もう死期しきせまっていた。ケイトが親切しんせつ看護かんごしていると、「ありがとう、ケイトさん・・・けれどもう、わたしんでく」とくるしいいきしたから、かなしげにった。
くな、フホーベス、おまえはもうおまえつみ十分じゅうぶんつぐなった」と、イバンスはなぐさめた。
けれど、かれ運命うんめいせまっていた。みながちからくして看病かんびょうしたかいもなく、次第しだいおとろよわり、午後四時ごごよじになって、とうとう最後さいごいきったのだ。って、一同いちどうかれをボードウィンのはかとなりに、ねんごろにとむらってやった。
だが、まだ、ロックとコープの生死せいしがわからない。そこで、イバンスは、ゴルドン、ブリアン、バクスター、それにウイルコクスの四人よにんれて、朝食ちょうしょくむとすぐ、フワンもつれて、二人ふたり行方ゆくえさがしにかけた。
けれど、それももうさが必要ひつようはなかった。陥穽林かんせいりんにはいると、一同いちどう二人ふたり死体したいになってよこたわっているのを発見はっけんした。コープは、弾丸だんがんたったところから九十きゅうじゅうメートルばかりへだたった場所ばしょたおれていた。ロックはウイルコクスのったとしあななかちてんでいたのだ。そこで、二人ふたり死体したいは、バイクの死体したい一緒いっしょあななかんでめてしまった。五人ごにん洞穴ほらあなかえって、そのこと報告ほうこくすると、みんなってよろこんだ。
が、ここにひとつまだ安心あんしんできないことがある。というのは、ドノバンの容体ようだいであった。ドノバンは終日眠しゅうじつねむるともなくめるともなく、昏々こんこんとして、いまだに意識いしきもどらない。
翌日よくじつ、イバンスはブリアンやバクスターと一緒いっしょに、ボートにって、家族湖かぞくこわたり、東方川とうほうがわくだって、ワルストンもとのねぐらへって、セベルンごうのボートをさがした。ふね大熊岩おおくまいわした砂浜すなはまいまげてあった。破損個所はそんかしょ調しらべてみると、ぶねのままぶんには、べつえられないこともなさそうであった。そこで、それをいで、同日どうじつ夜中過よなかすぎ、一同無事いちどうぶじにニュージーランドがわのほとりにいた。
さらに二重にじゅうにうれしいことには、ドノバンの様子ようす今朝けさから非常ひじょうい。呼吸こきゅうながく、ふかくなったということであった。これは普段ふだんから、ドノバンがからだつようえに、はんくすりもあったのであろう。このぶんでゆけば、数日すうじつあとには、きっと全快ぜんかいできるだろうとおもわれる。