十五少年漂流記(34)

朗読「十五少年8-2.mp3」9 MB、長さ: 約 9分 49秒

このハノーバルとうをめぐる海門海峡かいもんかいきょうは、せまいところで二十四にじゅうよんキロメートル、ひろくても五十ごじゅっキロメートルにぎない。だから、もし天気てんきであったら、モコーがボートでわけなくわたってけるところだったのだ。彼等かれら東北とうほく浜辺はまべって、しばしばとおくをたのにもかかわらず、それをることができなかったのは、対岸たいがん諸島しょとうが、あまりにひくく、きしたいらだったためである。ブリアンがしろてんは、たしかにゆきをいただいたアンデス山脈さんみゃくやまのひとつで、たこって空中くうちゅうからあかひかりというのは、おな地方ちほう噴火山ふんかざんひとつであったのだ。
ゴルドンはイバンスにかって、
「もし、セベルンごうのボートをれてこのしま出発しゅっぱつするとしたら、どの方向ほうこうかってくのですか?」とたずねた。
一直線いっちょくせん一直線いっちょくせんみなみかっていけば、チリこく沿岸えんがんのどこかのみなとひとつにくことができます。そして、そこで連絡船れんらくせんつのです」
「では、みなみけば、故郷こきょうかえ連絡船れんらくせんれますか?」ブリアンがたずねた。
「まずそうです。ところで、地図ちずをあけてごらんなさい。わたしたちがこれからみなみくだってくと、マゼラン海峡かいきょう西にしくちます。ここにタマルというみなとがある。そこへけばきっと帰国きこく連絡船れんらくせんことができるでしょう」
イバンスの説明せつめいは、地図ちずると、たしかにそのとおりである。まったく安心あんしんである。そこでまず少年しょうねんたちの、なによりの急務きゅうむは、マゼラン海峡かいきょうにはいることであった。が、そのためには、セベルンごうのボートを使つかわなければならない。それを使つかおうとおもえば、ワルストン一味いちみからそれをうばわなければならない。えれば、彼等かれらたたかって、彼等かれらたなければならない。
といって、それはじつ容易よういなことではないのだ。武器ぶきはある。防備ぼうびもだんだん着手ちゃくしゅはしたが、見回みまわせば、ゴルドンは十六歳じゅうろくさい、ブリアン、ドノバン、グロース、バクスター、ウイルコクスは十五歳じゅうごさい。いずれもまだ未成年みせいねん筋肉きんにくのまだいていない少年しょうねんたちで、あの不敵ふてき獰猛どうもう悪者わるものたちと対戦たいせんすることはむずかしい。
彼等かれらは、すくなくともみんな人情にんじょうわせていないやつらですか?」
ゴルドンがもう一度訊いちどたずねてみた。
無論むろんそうです」とイバンスがこたえた。
すると、ケイトが、「ですが、なかにただ一人ひとり、まだ良心りょうしんのいくらかのこっているひとがいます。それはわたしいのちすくってくれたフホーベスです」
すると、イバンスは、「だが、わたしはどうも合点がてんがいかない。なるほど、フホーベスはワルストンらの誘惑ゆうわくで、あの悪人達あくにんたち仲間入なかまいりをしたのかもしれないが、いまではワルストン同様どうよう悪人あくにんになっているとおもう。今度こんどわたしいかけてときも、わたしころしたとおもって、安心あんしんしてかえったあのときのことをかんがえてみても、どうもぼくには善人ぜんにんとはおもえない。もし奴等やつらが、この洞穴ほらあなめてきたら、第一番だいいちばんるやつこそかれちがいないとおもう」とった。

数日すうじつぎたが、ワルストン一味いちみ消息しょうそくは、まださっぱりわからない・・・。イバンスはそれをひどくあやしんだ。なぜだろう、何故なぜだろう?とあたまをひねって、ふと、こんなことをした。
「みなさん、わたしはこうかんがえる。ワルストン一味いちみは、自分じぶんたちが、みなさんにかんづかれているとは、らない。そこに彼等かれらはつけこんで、計略けいりゃくでかかってくるのかもしれない。つまり、奴等やつら漂流者ひょうりゅうしゃのような恰好かっこうでこの洞穴ほらあなにやってる。諸君しょくん親切しんせつむかれる。そのすきにんで、仲間なかま悪党あくとうをおびきいれ、一挙いっきょにこの洞穴ほらあな占領せんりょうするのではないかと、そんながする。彼等かれらのこれまでのやりくちからても、きっとそんなずるい計略けいりゃくをやるーー」
「では、僕等ぼくらは、どうやってふせいだらいいでしょう?」
無論むろんてき策略さくりゃくれば、こちらも策略さくりゃくおうじるよりほかはない」イバンスのこたえは簡単明瞭かんたんめいりょうであった。
翌日よくじつ何事なにごともなくれて、たそがれになろうとしたときだった。岩壁いわかべうえ見張みはりをしていたウエッブとグロースが、いそいで洞穴ほらあなけてて、
川岸かわぎしほうから、二人ふたりひとがこちらのほうへあるいてる」と報告ほうこくした。
たな、とうとう・・・」
ケイトとイバンスとは、いそいで物陰ものかげをかくして、まどのところからこうをると、はたして、ロックとフホーベスの二人ふたりだ!
「ははあ、想像そうぞうどおり、とうとうやってたな」イバンスはうなずいた。そのかお緊張きんちょうした。
僕等ぼくらはどうしたらいいでしょう?」そううブリアンのみみくちせて、イバンスはひそひそ、はかりごとをさずけた。そしてケイトとともに、物置ものおき戸棚とだななかにかくれた。
それから二分にふんぎたあと、ゴルドン、ブリアン、ドノバン、バクスターの四人よにんは、かわきして、ぶらぶら散歩さんぽしていた。
すると、ロック、フホーベスの二人ふたりはびっくりしたかおで、四人よにん少年しょうねんのそばにった。ゴルドンらも、二人ふたり姿すがたて、わざとらしくおどろきのいろせた。
きみたちは何者なにものだ?」とドノバンがまずった。
今朝けさ、このしま漂着ひょうちゃくした水夫すいふです」
「ほかの乗組員のりくみいんは?」少年達しょうねんたちはすかさずたたみかけた。
「みんなおぼれてんでしまいました。私達わたしたちは、二人ふたりだけのこって、ものやすむところがほしくって、やってました」
「どこのくにひとでも遭難者そうなんしゃすくわれるべき権利けんりがある。こちらへいらっしゃい」ブリアンは親切しんせつった。ロックはひたいがせまく、あごていて、一見いっけんして獰猛どうもうかおぬしである。が、フホーベスのほうは、どこかまだ人間にんげんらしいかおつきをしている。
きみたちはイギリスじんか?」
「いえ、アメリカじんです」
少年しょうねんたちがするどめると、こうはさもつかれきったようなかおつきをして、言葉巧ことばたくみにのがれをした。
けれども、彼等かれらみちびかれて洞穴ほらあなはいってると、ひそかにじろじろとあたりの様子ようす見廻みまわしたり、武器ぶき豊富ほうふこと守備しゅび厳重げんじゅうなのにおどろいた様子ようすであった。が、また物置ものおきたくわえてある道具どうぐ食糧しょくりょうがたくさんあることをると、たがいに見合みあわせて、ほくそみをしったのであった。ゴルドンがそれをひそかに、素早すばやてとった。
とこにつくと、彼等かれらはさもさもつかれたひとのように、すぐたかいいびきをかいた。そこへモコーがはいってって、一緒いっしょことっているくせに、あくまでらないふりをしてをつぶっていた。それから二時間にじかんたった。