十五少年漂流記(33)

朗読「十五少年8-1.mp3」9 MB、長さ: 約 9分 54秒

18.ゴルドンの提議ていぎしま位置いち

そのとき、ゴルドンが、ふっとくちをはさんだ。
「ですが、もしワルストンたちがおとなしくこのしまるならば、なに敵視てきしする必要ひつようはないとおもうが」
「どういう意味いみです?」イバンスはゴルドンのかおた。
「ですから、もし彼等かれらが、そのふね修理しゅうりすることができたなら、かれらは僕等ぼくらをいじめないだろうとおもうんです。だから、いっそぼくは、かれらに必要ひつよう修理しゅうり道具どうぐを、してやったらどうかとおもう。どうでしょう?イバンスさん」
イバンスはかんがえて、「なるほど理屈りくつはたしかにそうです。・・・ワルストンというやつをよくらないからそうえるのです。ところがです。奴等やつらしいのは、その大工道具だいくどうぐばかりではない。奴等やつら弾薬だんやくしい、あなたがたっているとおもうおかねしい、ついでにあなたがたいのちしいというのでしょうが、それもご承知しょうちですか」
「まさか!」

「そうでしょう。だから、彼等かれら腕力わんりょく以上いじょう、どうしても一戦いっせんまじえなければならない。一戦いっせんまじえるとなれば、はじめから計画けいかくをたててたたかったほう有利ゆうりです」
たしかに、あなたのとおりです。ぼくはそれに賛成さんせいします!僕等ぼくらめてくるてきたたかわなければならない!」とドノバンが決然けつぜんはなった。
「ところがわたしは」と、イバンスはつづけて、「彼等かれら大工道具だいくどうぐしてはならぬというのは、ほかにもひとつの理由りゆうがあります。もし彼等かれらふね修繕しゅうぜんしたなら、あるいは諸君しょくん恩義おんぎ感謝かんしゃして、フランスどうおそうようなことはないかもしれません。けれど、わたしたちのことはほうってってしまうかもしれませんよ」
「そんなことが一体いったい僕等ぼくらなん関係かんけいがあるのだろう?」とサービスが不審ふしんそうにくと、
「ところがおおありです!われわれがあのボートをうしなったら、どうやってこのしまのがれることができるでしょう?」イバンスは力強ちからづよった。
「すると、あなたは、あのふねでこのしまのがようとおもっているのですか?」
「もちろん!」とイバンスはこともなげにった。
「でも、あのちいさなふねで?この太平洋たいへいようをーー」
太平洋たいへいよう?だってきみわたしはあのふねでここからまず一番近いちばんちかみなとくよ。そこからふねえて、オーストラリアへかえるつもりです!」
「だけど、あんなふね数百すうひゃっキロメートルのなみえられますか?」とバクスター。
数百すうひゃっキロメートルだって?諸君しょくんは、一体全体何いったいぜんたいなに勘違かんちがいしていられるのです?僕等ぼくら航海こうかいするのは、せいぜい五十ごじゅっキロメートルぐらいしかないんですよ」
「えっ!五十ごじゅっキロメートル?じゃあ、このしまうみは、大洋たいようではなかったのですか?」
しま西にしほう大洋たいようです。しかし、ひがしみなみきた三方さんぽうかこんでいるのはそうではない!」
「じゃ、ここは大陸たいりくから、そうとおはなれていなかったのですか?」
イバンスのほうをまるくして、「じゃ、あなたたち一体いったいどこにいるつもりでいたんです?ここはしましまだけれど、孤島ことうではない。みなみアメリカ沿岸えんがん群島ぐんとうなかひとつにすぎないんですよ!みなさんはいろんなところに名前なまえけているようですが、このしまにもなに名前なまえをつけているのですか?」
「そうです、チェイマンとう名付なづけています。ぼくたちの故郷ふるさと学校がっこう名前なまえをとってーー」
「チェイマンとうか、では、このしまにはふた名前なまえがあるわけですな。なかではこのしまをハノーバルとうっていますよ?ハノーバルとう本当ほんとう名前なまえです。とにかく、けたら、わたしくわしく位置いち説明せつめいしてあげましょうーー」
少年達しょうねんたちは、かさねがさね意外いがいことに、おどろきもした。孤島ことうでないといて、狂喜きょうきもした。で、つかれたイバンスがあと、ゴルドンとモコーの二人ふたりは、洞穴ほらあな裏表うらおもてで、夜警やけいをしながら、けるのをった。これはじつに、十一月二十七日じゅういちがつにじゅうしちにちのことであった。
地図ちずひろげてみれば、すぐわかる。みなみアメリカのみなみはし大西洋たいせいよう太平洋たいへいようとがせっするあたりに、なが海峡かいきょうがある。海峡かいきょうなが六百ろっぴゃくキロメートル、その両岸りょうがんやまがえんえんとつづいて、たかさは海抜九百かいばつきゅうひゃくメートルにたっする。沿岸えんがんにはみなとおおく、ふね停泊ていはくてきしていて、いたるところに給水きゅうすい燃料ねんりょう便べんがある。そういうわけで、太平洋たいへいよう大西洋たいせいよう往来おうらいする航海者こうかいしゃは、かならずまずここへる。つまり、ここは一五二十年有名せんごひゃくにじゅうねんゆうめいなポルトガルの航海者こうかいしゃマゼランの発見はっけんしたもので、いわゆるマゼラン海峡かいきょうといわれるものである。
マゼランがこの航路こうろ発見はっけんしてから五十年後ごじゅうねんご、スペインじんがはじめてここへた。つぎにイギリスじんる、オランダじんる。ますますひらけた。海峡かいきょうきたはパタゴニアこくおよびキングウイリアムスランド、ブランスウイツリ半島はんとうなどの諸国しょこくで、そのみなみはすなわちテラデルフェーゴその群島ぐんとうである。マゼラン海峡かいきょうひがしひとつのおおきなわんで、視界しかいをさえぎるものも一切いっさいない大洋たいよう。その西にし太平洋たいへいようせっし、あまたのちいさな群島ぐんとうらばっている。
さて、イバンスは翌日よくじつ少年しょうねんたちをあつめて、地図ちずひらいて、みなみアメリカ南端なんたん地形ちけいしながら、説明せつめいつづけた。
「みなさん、ごらんなさい。マゼラン海峡かいきょうきたから西にしかってチリこく沿い、ちいさい群島ぐんとうがあるでしょう。そのなかみなみムクブリッジとうたいし、きたマドルとう、およびチャタムとうかいって、ひとつのしまがあります。このしま南緯五十一度なんいごじゅういちど西経七十四度三十分せいけいななじゅうよんどさんじゅうぶにあって、はハノーバルとういます。これがすなわち、みなさんがチェイマンとうをつけて、この二十にじゅっげつんでいたこのしまなのです!」
「では、ぼくたちはチリこくとは、ほんのちょっとへだたったしまにいたんですね?」ゴルドンはさけんだ。
「そうです。みなさんはたしかにチリこくちかくにいたのです。しかし、チリまたはアルゼンチン共和国きょうわこく到達とうたつするのには、たとえうみわたっても、そこからまだまだ数百すうひゃっキロメートルの荒野こうやをさまよっていかなければなりません。その労力ろうりょくは、とても、えられるものではありません。おまけにその荒野こうやには獰猛どうもう現地げんち人々ひとびとがいて、とてもきてはわたれないのです。みなさんがこのしまにじっとんでいたのは、じつ非常ひじょう幸福こうふくだったのです」