十五少年漂流記(30)

朗読「十五少年7-4.mp3」10 MB、長さ: 約 11分 11秒

17.悪人達あくにんたちはまだしまにいる

いとれた!少年しょうねんたちは仰天ぎょうてんし、口々くちぐちに、
「ブリアンくん!ブリアンくん!」と、こえかぎりにさけんだけれど、返事へんじはない。
すると、ものの二十分にじゅっぷんもたったころ湖水こすいきしから、「みんな!」とこえがあった。ブリアンのこえだ!
にいさん!」ジャックはころぶように、まっさきはしってった。
「みんな、ワルストン一味いちみは、まだこのしまにいるぞっ!」
一同いちどうけつけたとき、ブリアンが第一だいいちさけんだのは、この言葉ことばだった。
けば、たこいとれたとき、ブリアンは次第次第しだいしだい地上ちじょうちていくようにかんじたが、さいわいにもたこは、パラシュートのわりのようになって、さかさまにちはせず、そのまま水面すいめんちかかろうとした。そこでブリアンは、とっさにすすんで水中すいちゅうみ、百三十ひゃくさんじゅうメートルばかりおよいで、きしおよいたのである。
そのあと、たこはまたふわふわとうえへのぼって、北東ほくとうほうへとんでったということであった。一同いちどうよろこびもした。おどろきもした。ワルストン一味いちみが、まだこのしまにいるとなると、大変たいへんなことであった。
しかも、かれ悪者わるものがこのしまにいるとなれば、すでに二週間にしゅうかんになっている。二週間にしゅうかんしても、このしまろうとする様子ようすがないのは、かれらはふね修理しゅうりする道具どうぐっていないからであろう。もし、その道具どうぐがあれば、完全かんぜんふね修理しゅうりして、このしまるかもしれない。それは彼等かれらべつ居住地きょじゅうちさがそうともせず、いつまでもひとつの場所ばしょにいることでも、推測すいそくがつく。
なお、ブリアンがしまへだてて、ひかりたということから推定すいていすると、あまりとおくないところに陸地りくちがあるらしい。ワルストン一味いちみは、それをっていて、しまにいるのではない、と、かんがえているのではなかろうか。・・・とすると、またこのしまは、一同いちどうしんじていたように、孤島ことうではなくて、ちかくに大陸たいりくか、または群島ぐんとうがあることがさっせられるのである。
同時どうじに、せまったきゅう問題もんだいとして、悪者わるものどもが、東方川とうほうがわくちにいるのだとすれば、かれらは、そこからすこあるけば、湖畔こはんる。湖畔こはんをさまよっているうちに、この洞穴ほらあな発見はっけんされるという危険きけんがある・・・。
ともあれ、フランスどうは、いまや、非常ひじょう危険きけんおそわれている。いよいよ少年しょうねんたちは、警戒けいかいきびしくしなければならなくなった。
そこで、かれらはとりあえず、家畜小屋かちくごや鳥小屋とりごや垣根かきね洞穴ほらあな表裏口おもてうらぐちなどに、まつすぎえだりかけて、もりのようにせかけ、自分達じぶんたちはできるだけそとないようにした。
こういうなかにあって、少年達しょうねんたちに、なぐさめと激励げきれいあたえてくれるのは、ケイトであった。彼女かのじょじつ母親ははおやのような愛情あいじょういつくしみで、少年しょうねんたちをなにかにつけて親切しんせつ世話せわしてくれたのであった。
仲間なかまなか一番幼いちばんおさないコスターが病気びょうきになったときなぞ、本当ほんとう両親りょうしんおとらない親切しんせつ慈愛じあいで、看護かんごたってくれ、おもやまいからコスターのいのちめてくれたのであった。
十一月じゅういちがつ中旬ちゅうじゅんとなると、毎日まいにちあめれて、にわかに気候きこうあたたかになる。はやしみどりはいよいよくなって、はなうつくしくみだれ、南沢みなみさわには、おおくのとりかえってきた。
そのなか一羽いちわが、サービスのあみにかかった。らえてみると、つばめで、そのあごにはちいさなはこをつけている。
「それ、どこからか返信へんしんた」一同いちどうよろこんではこをあけてた。と、なあんだ!自分達じぶんたち去年きょねん秋入あきいれてやった遭難報告書そうなんほうこくしょかえってたのである。少年しょうねんたちはがっかりして、ためいきをついた。
いまでは一同いちどうは、たいてい洞穴ほらあななかにこもっていて、戸外こがいへもめったになかった。だから、バクスターのつけている日記にっきも、どうかするとなげやりになる。もっともくこともすくなかったが、みな一室いっしつによりかたまっては、ひまなのでくるしんでいた。そんなことで、そのうえさんげつもたてば、三度目さんどめふゆむかえなければならない。一同いちどう漂流当時ひょうりゅうとうじのことをおもし、先々さきざきのことをかんがえて、「いつまで自分達じぶんたちはこのしまにいなければならないのか、もしかすると、二度にど故郷ふるさと父母ふぼえる機会きかいもなく、このしまんでしまうのではなかろうか」などとかんがえながら、憂鬱ゆううつになっていた。
ブリアンだけは、一同いちどうさとしたり、なぐさめたり、はげましてはいるものの、こころなかではやはりみな同様どうように、つよ不安ふあんいだかずにはいられなかった。
この月二十日つきはつか午後二時頃ごごにじごろのことであった。ドノバンがニュージーランドがわ木陰こかげさかなっていると、きゅう湖畔こはんとりたがいにいながら、ひがしほうってった。
ドノバンは、それをると、
「ははあ、なに動物どうぶつ死体したいでもあるな」そうおもって、洞穴ほらあなかえって、モコーをんで、ボートをしてみた。と、たしてかれ想像そうぞうどおり、草原そうげんなかには、ちいさなラマの死体したいがあった。はまだたらたらとしたたり、死体したいにはぬくもりさえのこっていた。それからてもころされてから、まだいく時間じかんっていないことがわかるーー。
「うん、じゅうころされたんだな」
ドノバンがおどろいてうと、モコーも、「そうです、ここに鉄砲てっぽうたまがあります」といながら、モコーはナイフで、傷口きずぐちからひとつの弾丸だんがんをえぐりだしてせた。
うたがいもなく、ワルストン一味いちみった弾丸だんがんだ!
「さあ大変たいへんだ!」二人ふたりぶように洞穴ほらあなかえって、そう報告ほうこくした。一同いちどう今更いまさらのようにおどろいた。おそれた。が、銃声じゅうせいかなかったところからると、そうちかくでったものではないらしい。またラマのきず非常ひじょう重傷じゅうしょうであるところからかんがえると、そう遠方えんぽうったものでもないらしい。いずれにせよ、これはワルストンたち東方川とうほうがわをさかのぼって、次第次第しだいしだい洞穴ほらあなほうちかづきつつあることをしめすものだ。ことにその幾人いくにんかは、もう南沢みなみさわのほとりまでせまってきたことを証拠立しょうこだてるものだ。少年達しょうねんたちは、ますます用心ようじん用心ようじんくわえなければならなくなった。
ところが、その三日後みっかご、さらにひとつの重大じゅうだいことがった。それは、二十四日にじゅうよっか朝九時あさくじごろだったが、ブリアンとゴルドンとの二人ふたりが、ニュージーランドがわ対岸たいがん防備設備ぼうびせつびほどこすために、地形ちけい視察しさつったときのことだったが、ブリアンが、かわのほとりの密林みつりんはいると、かれは、ふと、みょうなものをみつけた。
ゴルドンは、ひろげて、「ブリアンくん、これは不思議ふしぎだ」
「え」ブリアンがかえると、
たまえ、これは陶器とうき出来できたパイプだ。・・・きっと、ワルストン一味いちみとしたんだよ」
「でも、ひょっとしたら、フランスどうにいたボードウィンのものだったかもしれないよ」
「そうではない、煙草たばこのにおいがまだのこっているよ。ほら、かいでみたまえ・・・一二時間いちにじかん、いや、すくなくとも、一日いちにち二日前ふつかまえにここにとしたものだ」
二人ふたりは、かお見合みあわせた。不安ふあんである。たしかに、かれらはこのフランスどうちかくまでたのだ。とすれば、少年達しょうねんたちは、すぐに防戦ぼうせん準備じゅんび着手ちゃくしゅしなければならない。
そこで、洞穴ほらあなとびらはしっかりしたかんぬきざされた。まえにはいしんで、なにかあれば、とりで代用だいようとなるようにした。そして、わきにあけたあなからは、ふたつの大砲たいほう筒口つつぐちかわ方向ほうこうにのぞかせた。そのみのなかで、ケイトも、少年しょうねんたちのために出来できかぎりのちからくした。けれども、彼女かのじょは、セベルンごうあらくれおとこのことをかんがえると、こころなかでは、非常ひじょう不安ふあん危惧きぐとにおそわれた。「それにしても、イバンスがこんなときにいてくれたら、どんなに心強こころづよ助太刀すけだちになることか」彼女かのじょはよくそうかんがえた。