十五少年漂流記(28)

朗読「十五少年7-2.mp3」8 MB、長さ: 約 8分 58秒

16.ジャックの告白こくはくたこいと

「ではブリアンくんきみたこをどのくらいのたかさまであげようとおもうんだね?」バクスターがたずねる。
二百にひゃくメートル前後ぜんごたかさまであげれば、この島全体しまぜんたい様子ようすえるとおもうのだ」
「じゃあ、やろう、やろう!まさしくものすごい大冒険だいぼうけんだね」と、サービスがだしぬけにさけんだ。
ゴルドン一人ひとりは、一同いちどうのそういうはないをだまっていていたが、あとで、ブリアンと二人ふたりきりになると、ふっとった。
ときに、ブリアンくんきみ本当ほんとうに、この計画けいかく実行じっこうしようとおもうのかね?」
「そうだ」「だが・・・」と、ゴルドンはじいっとブリアンのかおのぞみながら、「でも、この計画けいかく非常ひじょう危険きけんで、いのちがけなことは承知しょうちだろうね?」「もちろん」とブリアンはった。
「そのうえ一体いったいこの危険極きけんきわまりない仕事しごとを、仲間なかまなかで、だれがやるのだね?」
「さあ、たとえ仕事しごと危険きけんでも、それが自分じぶん義務ぎむだとしたら、きみでもいやだとはわないとおもうが、どうだろう?」
「すると、きみひとをくじきでめようとうのかね?」
「くじはいけない。こういう、重大じゅうだいなことになると、自分じぶん本心ほんしんからすすんでねがってるようなものでなければいけないね」
「・・・すると、きみむねなかには、ほぼそのひとめているんだね?」
「さあ、そうかもしれない」
ブリアンはあいまいな返事へんじをして、意味いみありげにゴルドンのをじいっとかたにぎりしめた。
翌日よくじつ、すなわち十一月五日じゅういちがついつかには、はやくも、ブリアン、バクスターなど、少年しょうねんたちはたこ改造かいぞうをつけた。もし少年しょうねんたちに、工学上こうがくじょう知識ちしき十分じゅうぶんにあったならば、まずたこ引上ひきあげるちから重量じゅうりょうと、たこ面積めんせき重力じゅうりょく中心ちゅうしん、それから、それにえるいとふとさなど、こまかな計算けいさんをしてから改造かいぞうしなければならないのであるが、少年しょうねんたちにはそれだけの知識ちしきいため、ただそれまでのたこちからをテストして、さらにそれをおおきくして、ほぼ六十ろくじゅっキログラムの重量じゅうりょうせてべるだけのおおきさのものをつくることになった。その六十ろくじゅっキロは、少年しょうねんたちのなかで、一番体重いちばんたいじゅうおもいもののおもさであった。一週間後いっしゅうかんごには、直径四ちょっけいよんメートルはん一辺いっぺんながいちメートル、面積約五十平方めんせきやくごじゅっへいほうメートルの八角形はっかくけい大凧おおだこ出来上できあがったのだ。
出来上できあがったとなると、少年しょうねんたちのはやい。凧揚たこあげのテストは、そののうちにおこなうことになった。そして、危険きけんがなければすぐに少年しょうねんなか一人ひとりは、それにって空中くうちゅうのぼろうと議決ぎけつされた。たこるすかごはスローごう甲板かんぱんにあったもので、ふかさは少年しょうねんたちのむねのあたりまであった。
かごからは一本いっぽんいと地上ちじょうりて、それにはてつとおっていた。かごなかのものがてつはなてば、それを使つかって地上ちじょうものもいろいろの通信つうしんたこおくることが出来できるようになっていた。このよるはちょうど南西なんせいかぜで、たこげるのにはちょうどいいし、つき午前二時ごぜんにじにのぼるので、ひとられるおそれもなかった。
九時くじになると、少年しょうねんたちは湖畔こはん広場ひろばあつまった。ドノバン、バクスター、ウイルコクス、ウエッブの四人よにんは、ウインチからひゃくメートルもはなれたたこのそばにっていた。
やがて、ブリアンの「用意ようい!」という号令ごうれいはっせられると、
「よし」というドノバンのこえおうじる。
同時どうじに、直径四ちょっけいよんメートルはん大凧おおだこは、かごなか土袋つちぶくろれたまま、くさなかから、するするするとしずかにあがりはじめた。ドール、コスターらは、たたいて、やたらによろこんだ。
すると、大凧おおだこはみるみるあがって、もなく密雲みつうんなかかくる。いとつよってあるのは、上空じょうくうかぜがひどいためであろう。たこはのぼりながら、かたむきもせず、あたまらずに、つね平衡へいこうたもっていることがわかった。
測量縄そくりょうなわではかってみると、はやくも地上二百ちじょうにひゃくから二百五十にひゃくごじゅうメートルにたっしているらしい。「このぶんなら大丈夫だいじょうぶだ」と、一同いちどうよろこんで、ウインチを逆回転ぎゃくかいてんさせて、うまくいったことをよろこんで、たこをおろしはじめた。げるときには約十分間やくじゅっぷんかんであったものが、おろすときには、約一時間やくいちじかんもかかった。
試験しけんんだので、一同いちどう洞穴ほらあなかえそうとした。そのとき、ゴルドンはブリアンのところすすって、
「だいぶもふけた。きみ、もうかえろうか?」
「・・・・」ブリアンはじいっとかんがんでいる。
ゴルドンはって、「さあ、かえろう」
すると、ブリアンはふっとった。「ちょっとってくれ、ゴルドンくん、ドノバンくんぼくはね、ここで君達きみたち相談そうだんがあるんだ」
相談そうだんこう」
「ほかでもない。テストは意外いがいにうまくいった。それとうのも、今夜こんやかぜは、ちょうど具合ぐあいがいい・・・。おそらく今夜こんやのような具合ぐあいのいいかぜは、毎晩まいばんのようにはない。明日あしたばんだって、おそらくこんないコンディションはない。だから、いっそ今夜こんやすぐ、これから、計画けいかく実行じっこうしようとおもうんだ」
計画けいかく実行じっこう!それをうのはたやすい。だが、いよいよ実行じっこうとなれば、それこそいのちをかけての大冒険だいぼうけんだ!だれすすんで、決死けっし大冒険だいぼうけんをしようとするものがあるだろうか?
するとブリアンは、元気げんきこえった。「諸君しょくんだれ駕籠かごるものはないか?」
それをわらないうちに、一同いちどうなかからこえがあった。「ぼくります!」
だれだろう?一同いちどうがみると、それは、ブリアンのおさなおとうとジャックであった。
たちまち、あちらこちらからさけごえおこった。「いや、それはぼくる!」
「なあに、ぼくる!」「いや、ぼくだ・・・」「ぼくだ!」
ドノバン、ウイルコクス、グロース、バクスター、そして、サービスらが一斉いっせいさけぶのであった。
ブリアンは、しばし、沈黙ちんもくした。だまって、じっとつよかんがえていた。