十五少年漂流記(26)

朗読「十五少年6-6.mp3」12 MB、長さ: 約 12分 35秒

14.ドノバン一党いっとう危難きなん

ケイトの物語ものがたりいた少年しょうねんたちのおどろきは、非常ひじょうなものだった。一人ひとり捕虜ほりょれた七人しちにん悪人あくにんーー凶暴きょうぼう悪者わるものどもは、いまや、このしまのどこかをうろついている。かれらはひところすことを、くさるよりも手軽てがるかんがえているのだ。
「もしかれらが、このフランスどう場所ばしょってしまったらどうだろう?僕達ぼくたち財産ざいさんはみんな掠奪りゃくだつされ、僕達ぼくたちはみんな奴隷どれいられるか、あるいはころされるかもしれない」
そうおもうと、ブリアンはまっさきにドノバンたちのことがにかかった。おそらくドノバンたちは、そんな悪人あくにんたちが大勢おおぜいこのしま上陸じょうりくしていることはらないだろう。
「あのりょうきなドノバンが、鉄砲てっぽうでもったら、どうしよう?悪人あくにんワルストンはすぐにあとをつけてくる。だから、このさい、ドノバンたちの居場所いばしょさがすことが第一だいいちだ」
危険きけんなことに、ドノバンたちのは、危機一髪ききいっぱつ瀬戸際せとぎわだ。ブリアンは自分じぶんていして、四人よにんすくおうと決心けっしんした。
「そうだ、モコーをれてぼくく。れたら、今夜行こんやいく」
にいさん、ぼくれてってください」と、ジャックが、すすんでた。
「いや、いけない。ボートは六人以上乗ろくにんいじょうのせることが出来できない。かえりには四人よにんるんだからね」と、ブリアンはちいさなおとうとをいたわるようにった。
で、その少年しょうねんたち一同いちどうは、洞穴ほらあなにとじこもって、一歩いっぽそとなかった。かれらはわるわるここへ漂着ひょうちゃくしたこと、今日きょうまでのらしのことを、ケイトにはなしてかせた。それをいてケイトは非常ひじょうおどろいた。また、非常ひじょう感心かんしんした。一同いちどう忍耐にんたい勇気ゆうきをほめた。そして、「これからは自分じぶん一同いちどう味方みかたになりたい」ともうた。サービスは、ケイトがここで一同いちどうにめぐりった金曜日きんようびだったので、ロビンソンの昔話むかしばなしにならい、ケイトを「フライデー」と名付なづけようと提議ていぎして、一同いちどう喝采かっさいをはくした。
午後八時ごごはちじくらくなるのをちかねて、ブリアンとモコーとは、各々一個おのおのいっこのピストルと、一振ひとふりの腰刀こしがたなたずさえ、一同いちどうわかれて、ニュージーランドがわからみずうみほうへとした。さいわかぜ順風じゅんぷうだったので、をかけたふねのようにはしる。不意ふいにモコーがブリアンのそばにって、じいっとにぎった。
そして、無言むごんのまま、むこうを指差ゆびさした。ると、右岸うがんうえのところ、かわをへだてて七八十しちはちじゅうメートルのところに、なかばえかかったが、あいだとおして、薄赤うすあかけむってえる。
ブリアンは、つきでボートをきしけさせた。
同時どうじにひらりと一人岸ひとりきしがった。そして、みぎにはこおりのような腰刀こしがたなをさげ、左手ひだりてにはピストルをにぎりしめて、そろりそろりとのそばへとしのった。
ワルストンの一味いちみか?それとも、味方みかたドノバンの一行いっこうか?
ブリアンはおどむねをしずめて、じりじりとしのる。
と、突然とつぜん前方ぜんぽう潅木かんぼくしげみから、おおきなくろかげがうごめいた。と、突如とつじょひとつのくろかげは、
「うおっ」とさけびながら、おどらせて前方ぜんぽうかかった。それは一頭いっとうのジャッカル(アメリカとら)であった。同時どうじに、
たすけて、たすけてくれっ」と、けたたましいひとさけび!
とっさに、ブリアンはそのこえがドノバンであるとった。ドノバンはまえ見張みはりをしているうち、ひるつかれで、おもわず居眠いねむりをした。そのすきにつけった猛獣もうじゅうは、不意ふいびかかって、ドノバンを地上ちじょうばした。じゅうもないドノバンは、勇敢ゆうかんにも素手すで猛獣もうじゅうとすさまじい格闘かくとうをはじめた。おどろいたのは、そばのウイルコクスだ。ドノバンのさけびとともに、じゅうって、猛獣もうじゅうがけて一発放いっぱつはなとうとする。その時遅ときおそく、けつけたブリアンは、
った、った!その鉄砲てっぽうってはいけない、ってはいけない!」ウイルコクスは二度にどびっくり!むこうをかしもなく、ブリアンははやくもそこにおどて、とら背後はいごからってかかった。
とらはたちまちドノバンをて、きざま、ブリアンにびかかる。
猛獣もうじゅう跳躍ちょうやくする!ブリアンはただひとつかみにつかまれたとおもいきや、ひらりとをかわし、そのままかたな素早すばやいた。かたなとらはらをぐさりとき、とらはばたりとたおれてしまった。どっとほとばしるしたからブリアンは全身血潮ぜんしんちしおびながら、すっくとった。
ウイルコクスは三度さんどびっくり。
「おお、きみはブリアン!今頃いまごろどうしてここへ?」
「いや、そのわけはゆっくりあとで・・・」
と、ブリアンはそういうあいだぜわしげに、
わけはあとで、ゆっくりはなすとして、とにかく、ぼく一緒いっしょてくれ!すぐに!すぐに!」
そのときよこからすすりきのこえこえる。ドノバンだ!
と、おもに、ドノバンはつかつかと、ブリアンのそばにった。そして、血潮ちしおにまみれたブリアンのをひしとにぎって、
「ブリアンくんぼくは・・・いまいまこそ、きみ友情ゆうじょうがわかった。これほどまでに、ああ、これほどまでに、きみ僕等ぼくらのためをおもってくれたのか、いのち恩人おんじんぼくはそのれいわないうちには、きみにはついてけないのだ」とって、ドノバンはかおをおおっていた。ブリアンも、感激かんげきたれながら、
「いや、ありがとう。れいなんかどうでもいい、きみだって、ぼくがこういう状態じょうたいになれば、きっとぼくすくってくれたよ。だが、いまはそんなことをっている場合ばあいじゃない。さあ、はやこう!さあはやこう」
あれほどよそよそしかったドノバンとブリアンとのあいだは、この危機ききまえにして、一時いちじにさらりとけた。仲直なかなおりが出来できた。いまや、二人ふたりむねむねとはたがいにって、なんともいえないつようつくしい友情ゆうじょうが、ここにいておこったのである。
ウイルコクスはハンカチをしていた。そしてブリアンがけたかすりきず手当てあてをしているうちに、ブリアンはブリアンで、簡潔かんけつに、ケイトのこと、それから数名すうめい悪人あくにんが、いまこのしま上陸じょうりくしていることをげた。
「ああ、それでわかった。僕等ぼくら不思議ふしぎ二人ふたり人間にんげんとボートをたんだよ」
「だから、君達きみたちにもはやかえってもらって、一緒いっしょ協力きょうりょくして、あの強敵きょうてきそなえなければならない」とブリアンはするどくあたりを見回みまわしながら、
じつはね、さっきウイルコクスくん発砲はっぽうしようとするのをめたのも、悪者わるもの銃声じゅうせいかせたくなかったんだ」
「ああ、そうか」と、ドノバンはなおもすすりきながら、「ああ、ブリアンくんきみはなんという素晴すばらしいひとなんだ!本当ほんとう本当ほんとうに、きみ僕達ぼくたちよりも百倍ひゃくばいもの素晴すばらしいひとだ!ああ、ぼく自分じぶんずかしい」ブリアンもうれしそうに、ひしとドノバンのにぎった。
「ドノバンくん、そうわれると、ぼくこそほんとうにずかしい。でも今日きょうという今日きょうきみこころってったことは、ああ、じつうれしい。ぼくはねーー」と、にぎったにじいっとちからをこめながら、
きみが、ぼく一緒いっしょにフランスどうかえるというまでは、けっして、けっしてこのはなさないよ!」
かえらないどころじゃい。よろこんで一緒いっしょかえるよ。かえったうえに、これからは、このぼくが、きみたいしては第一だいいち服従者ふくじゅうしゃだよ」
承知しょうちしてくれたか、ありがたい!ああ、今夜こんやという今夜こんやこそ、ぼくながながあいだのぞみが一時いちじたっせられたのだ。さあ、これからはこの勇敢ゆうかん親友しんゆう一心同体いっしんどうたいになって、僕等ぼくらおおきな災難さいなんたたかうのだ。わる奴等やつらをやっつけるんだ!」よろこびのあまり、ブリアンはにぎったともを、ちぎれるばかりに、つよつよった。「だが、今夜こんやこれからかえれるかしら?」ウイルコクスがそううと、ブリアンは、
「その心配しんぱいなら無用むようだ。あそこに、モコーがボートをつないで、僕達ぼくたち三人さんにんっている。ふねけばわけはない」
「ああ、そうか。まったくなんというとどいたきみ処置しょちだ」
「まったくね」とドノバンはウイルコクスにおうじて「実際じっさいブリアンくんがいなかったら、僕達ぼくたち今頃いまごろ獰猛どうもうとら餌食えじきになっていたんだ・・・」
こうして夜明よあ方四時がたよじ、フランスどうかえくまで、四人よにんはしみじみとブリアンの人格じんかくたたえ、かえかえれいうのだった。
フランスどうには歓喜かんきこえおこった。ものかえってもの十五人じゅうごにんこころは、ここにまったくって、たのしいあかるい気分きぶんにつつまれた。あたらしいきゃくのケイトもうれしそうだった。