十五少年漂流記(25)

朗読「十五少年6-5.mp3」6 MB、長さ: 約 6分 49秒

彼女かのじょはアメリカじんで、名前なまえをケイトとった。ニューヨークしゅう富豪ふごうぺンいえ女執事おんなしつじをつとめていたが、いまからひとつきほどまえ、ペン氏夫妻しふさいとともに、チリへ旅行りょこうしようとして、サンフランシスコから商船しょうせんんだ。
その商船しょうせん名前なまえはサベルンごうった。
そのふねには、船長せんちょうほか二名にめい運転手うんてんしゅ八名はちめい水夫すいふ、つまり十名じゅうめい船員せんいんとペン氏夫妻しふさいおよびケイトと、わせて十四名じゅうよんめい人々ひとびとせて、サンフランシスコからチリのヴァルパライソへとかったのであった。出帆しゅっぱんあと十日とおかぎたころだった。おそろしい事件じけんこった。それは、水夫すいふ一人ひとりで、をワルストンというものが、ほかの水夫すいふ扇動せんどうして、おそろしい陰謀いんぼうをたくらんだのであった。
謀反人八名むほんにんはちめいは、ある晩不意ばんふいあばれだして、船長せんちょう一等運転手いっとううんてんしゅ、それにペン氏夫妻しふさい四人よにん銃殺じゅうさつして、セベルンごうをぶんどってしまった。ケイトもあやうくころされそうになった。すると、水夫すいふのフホーベスというおとこあいだはいって、仲間なかまをなだめ、あやういところでケイトをたすけた。
二等運転にとううんてんのイバンスというおとこは、三十歳さんじゅっさいくらいで、性質せいしつもごくおとなしい。それで、最初さいしょからそんなおそろしいたくらみには加担かたんしなかった。けれど、悪人達あくにんたちは、イバンスをころすと、ふねあやつることができないため、ナイフでおどしつけて、無理むりやりにふね運転うんてんつづけさせた。
この事件じけんこったのは、十月八日じゅうがつようかよるのことで、そのときセベルンごうは、ちょうど、チリの海岸かいがんをへだてること三百さんびゃくキロメートルの沖合おきあいにあった。もともと悪人達あくにんたち目的もくてきは、このふねをぶんどって、みなみアメリカやアフリカの諸国しょこく往来おうらいして、そのころまだ内々行ないないおこなわれていた奴隷売買どれいばいばいをしようとするのであった。その手始てはじめとして、これからホノルルみさきをめぐって、アフリカの西岸せいがんかおうとしたのであった。
ふねはしった。すると、三日みっかばかりして、どうしたことか、不意ふい夜中よなか甲板かんぱんから火事かじこった。ごうごうとえるほのおは、みるみるふねつつみ、けようがなかった。
水夫すいふ一人ひとりは、からのがれようとおもって、うみなかんで、そのまま行方不明ゆくえふめいになった。あとの七人しちにん水夫すいふは、わずかな食料しょくりょう武器ぶき弾薬だんやくしただけで、やっとからだだけのがれる始末しまつだった。せっかく掠奪りゃくだつしたセベルンごうてて、ボートにうつったのだ。そのときは、陸地りくちから三百さんびゃくキロメートルばかりはなれていたが、彼等かれらはそれから海上かいじょう漂流ひょうりゅうすること二昼夜にちゅうや、さらにおおあらしにあって、かぜなみのまにまに漂流ひょうりゅうし、ついにこのチェイマンとう北浜きたはまきつけられたのであった。それはおとといの十五日じゅうごにち夕方ゆうがたのことである。
そのときは、船中ふねじゅうものはみなつかれとえとで、死人しにん同様どうよう浜辺はまべげられた。ケイトもほかの二名にめいひととも浜辺はまべげられたのだが、すなうえころがったことまではおぼえていたが、それからあとはどうしたか、すこしもおぼえがない。
で、がたちかくなって、だんだん正気しょうきづいてとき、ふっと足音あしおとがする「おや!」とおもって、みみましてうかがうと、それは悪人あくにんワルストンたちが、ふねさがしにやってきたのであった。かれは、ブラント、ブルークという二人ふたりおとこしたがえてた。で、そこにたおれているフホーベス、バイクの二人ふたりさがし、手当てあてをして、彼等かれら同士どうしつぎのようにかたりだした。
「ここはどこのくにだろう?」とフホーベスがたずねると、
「どこからないが、とにかくひがしのほうへかなければ、人間にんげんはいないだろう」とワルストンがった。
武器ぶきはどうなったろう?」
五丁ごちょうじゅう火薬かやくがまだすこしはのこっている」
「イバンスはどうなったろう?」
おれたちのあとで、ロックとコープの二人ふたり見張みはっていた」
「ケイトは、無事ぶじ上陸じょうりくしただろうか?」
「うん、ケイトか?あいつもとうにお陀仏だぶつだ。ふねがここにげられるときおれはあいつがうみちたのをとおくからたよ。たぶん、今頃いまごろさかな餌食えじきになっているだろうよ」ワルストンはあらっぽい言葉ことばでそうって、
「だが、あいつはうみちてななくても、どうせおれたちの秘密ひみつってやがったんだから、ながくはかしておけんやつだったんだ」
こうして彼等かれらは、ボートのなかから武器ぶき弾薬だんやくものして、それを分配ぶんぱいし、はげしいかぜなかひがしほうへとすすんでった。あとでケイトはそっとおこして、彼等かれらとは反対はんたいはやしをめざしてあるいてった。野生やせいひろって、なんとかいのちをつないだが、あのまつまでたどりついたころから、もうどうにもあるけなかった。そこを、ブリアンたちにすくわれたのだった。