十五少年漂流記(24)

朗読「十五少年6-4.mp3」7 MB、長さ: 約 8分 00秒

13.大凧おおだこ発案はつあん はやしなかひとたち

物語ものがたりもともどるーーーフランスどうほうでは四人よにんってからというもの、みんなたのしまない様子ようすであった。
愉快ゆかいではなかった。なかでもふさいでいるのは、ブリアンで、ゴルドンはよくそれをなぐさめた。
「ブリアンくん、そうくさらせないほうがいい、いくらドノバンくん傲慢ごうまんでも、ふゆごもりまでにはきっとかえってぼくたちと一緒いっしょになるよ」
たしかにそうだった。四人よにんだけのちからで、このしま険悪けんあくきびしいふゆたたかって、たたかくとこと出来できない相談そうだんなのであった。が、少年達一同しょうねんたちいちどうにとっても、つぎふゆまでこの孤島ことうにとどまっていなければならないとすれば、非常ひじょう心細こころぼそい。不安ふあんだ。一体いったいこのへんは、ふね往来おうらいがないのだろうか?
そこでブリアンはした。「オークランドおか信号しんごう海抜かいばつ六十ろくじゅうメートルにすぎない。だから、ちかくをとおふねでなければることができない。で、ぼくは、このごろひとつの計画けいかくかんがえた。さいわい、僕等ぼくらおおくの帆布ほぬのとリネンをっている。それでおおきなたこつくって、三百さんびゃくメートル内外ないがいたかさまでげたら、どんなものだろう?きっととおくのひとくだろうとおもう」
そんなふうにった。無論むろんたこかぜのないにはあげられない。けれど「たこをあげる」という計画けいかくには、一同大喜いちどうおおよろこびで、さっそく賛成さんせいした。バクスターが監督かんとくになって、いよいよ大凧おおだこ制作せいさくかったのは、ドノバンたち四人よにんがフランスどう出発しゅっぱつした翌日よくじつのことであった。
やがて出来上できあがったのは、八角形はっかくけい大凧おおだこで、そのおおきさは、少年しょうねん一人ひとり背負せおって、空中高くうちゅうたかがることのできるような大凧おおだこだった。それが三百さんびゃくメートルのたかさにがれば、ひゃっキロメートルほどもへだたったひとにもはいるだろう。が、ただこまったことは、この大凧おおだこ少年しょうねんたちのちから操縦そうじゅうすることができない。そこでいとはウインチを使つかってちぢみさせることにした。
十六日じゅうろくにちは、いよいよ凧上たこあげの予定日よていびだ。
少年しょうねんたちは、よろこいさんで、ベッドからきてみると、あいにくそのはひどい模様もようで、午前中ごぜんちゅうから大暴風雨だいぼうふうう凧上たこあげなどは、とてもおもいもよらないことだった。
翌日よくじつになると、かぜもややおとろえ、昼過ひるすぎにはほとんど普段ふだんしずけさにかえったので、少年達しょうねんたちそとて、いよいよたこをあげようと準備じゅんびにかかった。と、ちょうどそのとき、どうしたことか、猟犬りょうけんのフワンが不意ふい二声三声高ふたこえみこえたかえた。そしておどらせて、もりなかんだ。
「フワン、どうした?」
「なにか獲物えもののにおいをかいだのかな?」
「けど、いつものかたとはちがうぞ、様子ようすい」
「だが、鉄砲てっぽうたなくては」
ブリアンがそううと、サービスとジャックとは、大急おおいそぎで洞穴ほらあなへとんでかえって、鉄砲てっぽうってきた。
「ではこう」と少年達しょうねんたちはぞろぞろとフワンのあとについて、陥穽林かんせいりんみなみはしにはいると、のむこうでは、フワンのえるこえがしきりにたかまる。
「おかしいぞ・・・どうも様子ようすへんだぞ・・・」
少年達しょうねんたち五十ごじゅうメートルばかりった。同時どうじ一同いちどうは、なにたか、ぎょっとしてまった!
「あ!あ!」とさけんだ。
ると、そこにそびえるまつしたには、一人ひとりひとらしい姿すがたえる。たしかにひとだ!
しかも、よこになってているのだ!
四十年輩よんじゅうねんぱい一人ひとり婦人ふじんだ!それが、には粗末そまつふくをつけて、赤茶色あかちゃいろのストールをかけ、かおあおざめて、死人しにんのようにこんこんとたおれてているのだ。くるしそうにいしばっているが、まだ呼吸こきゅうかよっているらしい。きっと、ひどいつかれとえのために、ここでたおれているのだろう。
それを少年しょうねんたちのおどろきは非常ひじょうなものであった。それもそのはず、一行いっこうがここへ漂着ひょうちゃくして以来いらい仲間なかまほかひとたのは、じつにこれがはじめてであったのだ。
一同いちどう茫然ぼうぜんとして、しばらくのあいだは、だれもものをいうものはなかった。
沈着ちんちゃくなゴルドンは、じいっと様子ようすていたが、
「でも、まだいきがある。いきがある・・・これはきっとおなかがすいてたおれているんだ」
そうわらないうちに、ジャックははやくも洞穴ほらあなんでかえった。そして、すこしのかたパンとブランデーをってた。ブリアンはブランデーのびん受取うけとって、婦人ふじんくちらしてやると、婦人ふじんはやがてうごかした。
ひらいて、じろじろと少年しょうねんたちのかお見回みまわした。
「これをべたらいいよ」とジャックがかたパンをやると、それを受取うけとって、いそいでくちはこんだが、ほとんど一口ひとくちんでしまった。やはりひどくえていたものらしい。
夫人ふじんわると、こしながら、はっきりと英語えいごった。
みなさん、どうもありがとう・・・ありがとう・・・」婦人ふじん意識いしきがはっきりしたので、一同いちどうよろこんだ。
それから半時間はんじかんあとには、婦人ふじんはフランスどうれられてきた。彼女かのじょは、少年一同しょうねんいちどう看護かんごされながら、寝床ねどこうえですやすやとねむっていた。
そして、一同いちどうむかって、ぽつぽつと自分じぶん上話うえばなしをはじめたのであった。

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