十五少年漂流記(23)

朗読「十五少年6-3.mp3」14 MB、長さ: 約 14分 45秒

12.ドノバンたちとのわかれ、大暴風雨だいぼうふうう

その後六週間あとろくしゅうかんばかりたつと、しまはもう十月じゅうがつすえ木々きぎみどり青々あおあおとして、とりたのしく木々きぎあいだいている。家族湖かぞくこ南岸なんがん付近ふきん、ちょうどはやしかげでは、四人よにん少年しょうねんが、野営やえいをして、大鴨おおがも串刺くしざしにしたものをあぶっていた。
それは、ドノバン、グロース、ウエッブ、ウイルコクスの四人よにんであった。いま、この四人よにんはフランスどう少年しょうねんたちとわかれて、ここへていた。あの選挙せんきょあと、ドノバンとブリアンとのなかは、どうしても円満えんまんにいかなかった。ゴルドンが心配しんぱいして、いろいろ仲裁ちゅうさいをしてみたが、四人よにん気持きもちはますますかたくなり険悪けんあくになって、食事しょくじのとき、かおわせるのさえきらった。四人よにんだけはいつも洞穴ほらあなすみっこにかたまって、ひくこえでなにかぼそぼそとはなしている。
ついに、ある、「ぼくたち四人よにんはここをようとおもう」と、ドノバンがした。ゴルドンは心外しんがいそうに、
「いったい、きみたち四人よにんは、僕等ぼくらてて、いまさらどこへこうというのだ?」とった。
ドノバンはひややかに「いや、きみたちをてるわけじゃない。ぼくたちは、四人よにんだけで、しばらきみたちと別居べっきょするだけなのさ」とった。
何故なぜだろう?」バクスターがたずねた。
「では、率直そっちょくおう。じつは、ぼくたちはブリアンくん一緒いっしょにいたくないのだ」
「それはどういうわけだろう?きみたちはぼくのどういうところが不満ふまんなのだ?」ブリアンはかえした。
「つまり、きみには総督そうとくとしての権利けんりがないということさ」ドノバンはすように皮肉ひにくった。
ぼくたちはみなイギリスじんだろう、それなのに、まえにはアメリカじん総督そうとくにして、今度こんどはフランスじん総督そうとくになった。この法則ほうそくからくと、このつぎ選挙せんきょにはきっと黒人こくじんのモコーが総督そうとくになるというわけだろう、はははは」「きみはそれを真面目まじめっているのかね?」ゴルドンはあきれたようにった。
ぼく真面目まじめだ、真剣しんけんっているのだよ、ほかの諸君しょくんはいざらず、ぼくたち四人よにんはイギリスじんだから、イギリスじん総督そうとくおさめるもとでなければ、一日いちにち我慢がまん出来できない」と、ドノバンははなった。
こうなっては仕方しかたがない、ブリアンはあきらめたように、
「では、仕方しかたがない・・・。きみたち四人よにん自由じゆうにここからってきたまえ。そしてこの共同財産きょうどうざいさんなかから、きみたちがって権利けんりのあるものは、自由じゆうってきたまえ」ゴルドンはそばからしんみりと、
「だが、きみたちは、あとできっと後悔こうかいすることがあるかもしれない。せっかくこうやって一緒いっしょにいたものを・・・さびしいね」だが、四人よにんがんとして決心けっしんをひるがえさなかった。
ドノバンがここをってからの計画けいかくというのは、ブリアンがさきった欺瞞湾ぎまんわん浜辺はまべ住居じゅうきょさだめ、そのあたりのはやしとりけものをとって生活せいかつしようというのであった。そことフランスどうとの距離きょり二十にじゅっキロメートルほどであるから、をすることも、わけはないとかんがえたからである。
こうして四人よにんは、翌日よくじつ、すなわち十月十日じゅうがつとおかあさになると、旋回銃二丁せんかいじゅうにちょう連発銃四丁れんぱつじゅうよんちょう斧二おのふたつ、火薬若干かやくじゃっかん、それにゴムせいのボート、すこしばかりのものたずさえて、フランスどうわかれてた。くもの、のこるもの、さすがにかなしそうに洞穴ほらあなそとまで一緒いっしょってわかれた。ニュージーランドがわきしくと、そこにはモコーがふね用意よういしてっていたので、四人よにんかわわたって、モコーにもわかれた。
そのは、フランスどうからはちキロメートルの地点ちてん野営やえい翌日よくじつ東方川とうほうがわまでまえに、ダチョウや、ラマや、ペッカリーなどをって、四人よにんたのしくあそんだ。れいのブリアンがはち月前げつまえおとうとからおそろしい告白こくはくいたおなしたに、それともらずに、四人よにんはあくるよる野営やえいをした。
「さあ、これから欺瞞湾ぎまんわんこう、そしてストーンパインをろう」ドノバンは一同いちどううながして出発しゅっぱつした。東方とうほうにひらけるあおうみをながめて、かれはまたった。
ぼくはどうもこのしまは、アメリカ大陸たいりくちかいようながしてならない、このへんにいてていれば、きっとちかいうちに、帆影ほかげおきとおるかもれない。一向欺瞞湾いっこうぎまんわんでもないな、はははは」
そうこうしているうちに、四人よにんめるような住居じゅうきょつかった。つまり欺瞞湾ぎまんわんのところに住居じゅうきょさだめて、ここにあたらしいちいさな植民地しょくみんちがひらけたのだ。で、このうえは、フランスどうから四人よにん荷物にもつはこんでなければならぬが、それにはモコーにたのんで、水路すいろをボートではこぶことにめた。
翌朝よくあさきたをさしてくと、一筋ひとすじかわがある。それに北方川ほっぽうがわ名前なまえをつけた。かわわたって浜辺はまべほうようとすると、こうにあやしげなおおきな動物どうぶつがいる。「おや、なんだろう?ドノバンくん」グロースがさけんだ。
へん怪獣かいじゅうだな、とにかく射止いとめてやろう」ドノバンは、グロースと二人ふたりで、あしさしあし三十さんじゅうメートルばかりちかくのところしのった。そして二人ふたり一斉いっせいじゅうはなった。
が、動物どうぶつかわ非常ひじょうあつくて、弾丸だんがんかえされた。動物どうぶつはびっくりした様子ようすで、はやしなかんでしまった。ドノバンは後姿うしろすがた見送みおくりながら、
「うん、あれはバクという動物どうぶつだよ。みなみアメリカのかわにすむ動物どうぶつでね、べつひとがいくわえないが、やくにはたたない無用むよう長物ちょうぶつなんだよ」
翌日よくじつ、つまり十月十五日じゅうがつじゅうごにちになると、あさから空模様そらもようへんになった。とおもに、電光でんこうがぴかっときらめいて、烈風れっぷうこった。あめはざあざある。かみなりはごろごろとりとどろく。日暮ひぐれには天地てんちくらになって、ものすごい暴風雨ぼうふううになった。
四人よにんは、その暴風雨ぼうふううなかをひたはしりにはしって、しま北浜きたはまへとた。
たけかぜ合間あいまから、なみおとこえてた。やみをすかしてながめると、泡立あわだなみがしらがかえかえししているのがえる。と、先頭せんとうったウイルコクスが、なにたか、ふとあしめた。あとかえって前方ぜんぽうしてせた。
三人さんにん何気なにげなくた、と、同時どうじに、ぎょっとして三人さんにんともにちすくんだ!
そこには、彼等かれらから二十にじゅうメートルあまりこうに、一隻いっせきのボートがげられているのだ!
ボートばかりではない、その左八九ひだりはちきゅうメートルのところには、海草かいそうがうずたかげられてあって、そのなか二人ふたり人間にんげんたおれているのだ!
人間にんげんがいたのだ!あまりのおそろしさ、あまりのこわさに、四人よにん化石かせきしたように、あしうごかなかった。いきまるようだった。しばらくそこにちすくんだ。
むねはとどろく、いきははずむ。全身ぜんしんがわなわなとふるえる。でも、勇気ゆうきをふるって、人間にんげんほうへそろそろとすすんで、十四五じゅうしごメートルのところまでったが、不意ふいはげしいおそれにおそわれるとともに、彼等かれらをひるがえして、あっというはやしなかかえってしまった。
海草かいそうなかたおれていた人間にんげんは、まだいきがかよっていたか?それとももうんでいたのか?
彼等かれらは、それを調しらべる余裕よゆうもなかった。
あとには、さすがのはげしい稲妻いなずまもまったくんだ。が、はまはなおくらくてものすごく、なみこえや、かぜおとは、おどろおどろとよるやみなかになりつづけている。
「なんというおそろしいあらしだろう!あ、大木たいぼくがあんなにれた!こそぎにされた!」
四人よにんは、ぶなのかげあつまって、その夜一夜よいちやかすあいだも、きた心地ここちがしなかった。それほどあらし猛烈もうれつだった。小砂利こじゃりあめのようにかおち、かぜは、からだばすようだった。
あらしばかりではない、あのボート、あの人間にんげんのことをおもすと、四人よにんはぞおっとして、こわくて、一晩中ひとばんじゅうまんじりともしなかった。
「あのボートはどこのくにのものか?あの二人ふたり遭難者そうなんしゃはどこのくにのものか?」
そういうふううたがいをおこしていくと、とにかくこのしまからとおくないところにほかしまか、または大陸たいりくがあるのではなかろうか?四人よにんはそうかたりあった。それから、しばらくすると、とおくでひとこえがするようながした。そのこえからかんがえると、あるいは、あの二人ふたりほかにもきたものがいて、浜辺はまべをさまよっているのではなかろうか・・・。彼等かれら熱心ねっしんみみかたむけた。こえった。が、そのときは、もうこえこえなかった。ただかぜこえなみおとだけが、すさまじくこえるばかりだった。
じつに、その一夜いちやながかったこと、どおしかったこと!け、ひがししらむのをあいだは、一世紀いっせいきよりながいようにおもわれた。
けたが、くもはなおひくそらあっし、そらをちぎれてんでいる。大雨おおあめのやってるきざしだ。四人よにんは、くるかぜなかに、たがいにをつなぎって、浜辺はまべった。
決心けっしんをしてかけたのだ。四人よにんをつなぎわせていても、たおれそうな、ひどいひどい烈風れっぷうだった。はまってみると、ボートは昨夜さくやのとおり、すなうえっているが、人間にんげんはどこへったか、かげかたちもない。四人よにん浜辺はまべをあちこちとさがしてみたが、足跡あしあとさえも発見はっけんすることができなかった。
「かわいそうに・・・昨夜助さくやたすければ、まだいきがかよっていたかもれないものを!」
ウイルコクスはつぶやいた。
ボートを調しらべてみると、ながきゅうメートルばかりのボートで、帆柱ほばしられ、右舷うげんはひどくこわれている。修繕しゅうぜんくわえなければ、航海こうかいはできそうもない。船内せんないには、帆網ほあみれになったものがちているだけで、べるものもなければ、武器ぶきもない。ただ船尾せんびのところに、五六字ごろくじ文字もじがある。ると、ボートの親船おやぶね名前なまえとその本籍地ほんせきちいてある。--「セベルンごう、サンフランシスコ」