十五少年漂流記(21)

朗読「十五少年6-1.mp3」11 MB、長さ: 約 12分 13秒

六月十日ろくがつとおかには、いよいよこのちいさな植民地しょくみんちきたるべきときた。その、ゴルドンの任期にんきわり、あたらしい総督そうとく選挙せんきょおこなわれるのだ。ゴルドンは多数たすう少年しょうねんからきられていることをよくっていたので、再選さいせんはもとよりのぞんでいなかった。また、ブリアンは、自分じぶんがフランスじんなので、ほとんどがイギリスじんのこの植民地しょくみんちで、提督ていとく推薦すいせんされるなどとはゆめにもおもわなかった。選挙せんきょちかづくにつれ、一番心配いちばんしんぱいそうなかおになってたのは、ドノバン一人ひとりであった。
いよいよ選挙当日せんきょとうじつだ。投票とうひょう午後ごごまった。少年しょうねんたちはちいさな紙切かみきれをち、自分じぶんえらんだ候補者こうほしゃ名前なまえいて、投票とうひょうする。このしま人口じんこう十五人じゅうごにんだけれど、モコーには選挙権せんきょけんがない。だから、十四票じゅうよんひょうのうち、八票はっぴょうたものが、当選とうせんするのである。
ゴルドンは選挙せんきょ責任者せきにんしゃ椅子いすについた。少年しょうねんたちは厳粛げんしゅく態度たいどで、めいめい貴重きちょう一票いっぴょうとうじた。選挙せんきょおわると、すぐに結果けっかげられる。
ブリアン八票はっぴょう。ドノバン三票さんぴょう。ゴルドン一票いっぴょう。つまりブリアンが最大多数さいだいたすうたのであった。
ゴルドンとドノバンは選挙権せんきょけん放棄ほうきし、ブリアンは、ゴルドンに投票とうひょうし、そのほか、ウエッブ、ウイルコクス、グロースがドノバンにれ、そのほか少年しょうねんたちはみんなブリアンに投票とうひょうしたのであった。
ドノバンは不快ふかいいろかおからかくすことが出来できなかった。ブリアンは意外いがいのことにおどろいて、自分じぶんがそのにんでないことを主張しゅちょうし、辞退じたいしようとした。が、こころなかなにおもいついたことがあったとえておとうとジャックのほうをやりながら、おもむろに、「感謝かんしゃします、諸君しょくん!つつしんで諸君しょくんめいをおけします」こうして選挙せんきょとどこおりなくんだ。そのあと、ジャックは、そばにひとのいないのをすまして、ひそかにあにかい、「にいさん、にいさんはなぜ総督そうとくになることを承知しょうちしたのですか?」とこえをひそめてたずねると、「それはね」とブリアンはやさしくさとすように、「みんなのために、にいさんとおまえとが、これから自分じぶん犠牲ぎせいにしてはたらくには、にいさんが総督そうとくになっておくほうが便利べんりだとおもったからだよ」
ジャックはその一言ひとことむねをつかれた。なみだぐんで、
にいさん、ありがとう、ありがとう・・・もしみなさんのためにいのちてるようなときがあったら、どうかぼくにやらせてください。ね、にいさん、ぼくなせてください!」と懸命けんめいにせがんでやまないのだった。
ブリアンの総督そうとくぶりはおごらず、いばらないで、よく忠実ちゅうじつにその職務しょくむくした。少年しょうねんたちはみなよろこんで、その指揮しきしたがった。ドノバンたち四人よにんものは、最初さいしょのうちこそブリアンに反抗はんこうするものはかったが、やむにやまれぬ不平ふへいは、次第しだいにその言動げんどうにもあらわれるようになったのは、しかたがないだろう。
ジェンキンス、イバーソン、ドール、コスターなどのちいさい子達こたち勉強べんきょうすすんだほか、べつくようなこともく、六月ろくがつ七月しちがつぎた。もっとも、そのあいだに、スローわんうえはたやぶれたので、あたらしいものにえたようなことはあった。
八月下旬はちがつげじゅんになると、島全体しまぜんたいがひどいさむさにおそわれて、みずうみ一面いちめんあつこおりおおわれた。スケートにはもってこいの季節きせつ場所ばしょである。
そこで、ブリアンの発案はつあんで、スケートの大会たいかいもよおすことになった。二十五日にじゅうごにちあさ、イバーソン、ドール、コスター、モコーの四人よにんのこして、ほか十一人じゅういちにんは、そろってスケートにかけた。
諸君しょくん、あまりとおくのほうってはいけません。ラッパをいたらすぐここへかえるんだよ」とブリアンはまずみんなに注意ちゅういをして、ゴルドンの合図あいずで、みんな一緒いっしょすべした。一番いちばんうまいのはジャックだった。ドノバンは、ジャックがしきりにみんなの喝采かっさいけるのをて、はらのなかで面白おもしろくなかった。
そこで、ドノバンは、グロースをそっとんで、「きみ、あそこへかもりたよ」
「だけど、ブリアン総督そうとくはあまりとおくへってはけないとったぜ」
「なに、かまうものか、ブリアンなんかのうこと、かまうものか。さ、ぼく一緒いっしょこうよ」
ドノバン、グロースの二人ふたりじゅうをかついで、少年しょうねんたちが面白おもしろそうにあそんでいるところからはなれて、ぬまほうへとはしってってしまった。
「どこへくんだろう?」とブリアンがつぶやいているうちに、二人ふたりかげはすぐちいさな二個にこくろてんとなり、たちまち視界しかいからえなくなってしまった。日没にちぼつまでにはまだ時間じかんがあるが、このごろの天候てんこうでは、いつどんなふうわるかわからない・・・。とおもっているうちに、午後二時頃ごごにじごろ、とてもふかきりみずうみうえおそってきた。「あれほどとおくへくなとったのにってしまった。こんなきりで、どうしてかえることが出来できるだろう?」ブリアンは心配しんぱいそうにった。そして、ラッパをつづけたけれど、それにこたえるじゅうおとは、こえない。ただ、きりはいよいよくなるばかりである。
「さあこまった!どうしたらいいだろう?」
そういうゴルドンにブリアンはこたえて、「じゃ、ラッパをきながらさがしにけば、二人ふたりみみには方角ほうがくがわかる。それが一番いちばんいい方法ほうほうだ」
「なるほど、それはいいおもいつきだ。じゃあ、ぼくこう」とバクスターがちかけると、
「いや、ぼくく」「いや、ぼくが」と、二三にさん少年しょうねんが、けなげにも自分じぶんからこうとした。
「いや、ぼくく」ブリアンがきっぱりつようと、ジャックは、
「いや、にいさん、ぼくをやってください。ぼくはスケートが得意とくいなんだもの。ぼくくのが適当てきとうでしょう。ねえ、にいさん・・・」あにはじいっとおとうとかおた。
「よし、じゃ、お前行まえいけ!きながらラッパをけよ。よくをつけて、むこうの鉄砲てっぽうおととすなよ、じゃあ、をつけて・・・」「はい・・・にいさん、では」ジャックはラッパをつかんでいさましくきりなかへと突進とっしんしてった。けなげな可憐かれんなその後姿うしろすがた・・・。見送みおく少年しょうねんたちのは、つよ感激かんげきかがやいた。なみだにうるんだ。それから半時間はんじかん・・・たったが、ドノバンとグロースの姿すがたえない。
あとっていったジャックの様子ようすもわからない。みんなひどく不安ふあんになってきた。「大砲たいほうつかな!」とサービスがすと、「そうだ、そうだ!大砲たいほうがいい。すぐ洞穴ほらあなかえって大砲たいほう連発れんぱつしてやろう」そういうブリアンのこえに、二三にさん少年しょうねんたちはすぐに洞穴ほらあなはしってかえった。
ふだんは、そのその一粒一粒ひとつぶひとつぶ宝石ほうせきのように貴重きちょう大事だいじにしていた火薬かやく。それをいましげもなくして、ふたつの大砲たいほうそうてんして、わるわるにそれをった。
「ドドン!ドドドン!」という音響おんきょうおかふるわせ、こおりをわたって、すうキロメートルのむこうに反響はんきょうした。じつ物凄ものすごひびきであった。が、湖上こじょうはやはりひっそりとして、なんこたえもない。と、午後五時ごごごじごろ、るか北東ほくとうほうから、二三発にさんぱつ銃声じゅうせいきりなかからこえてた。
一同いちどう元気げんきづいて、さらに大砲たいほうつづけ、つづけるうちに、数分すうふんあと二人ふたり人影ひとかげがおぼろげにえた。こちらからべば、むこうもこたえ、そのこえあたりにひびいた。
ふたつのかげは、ドノバンとグロースとであった。ジャックだけはなかった。
「ジャックは一緒いっしょじゃないね?おかしいな、どうしたんだろう?」
「いや、ラッパのこえこえなかった」とこたえる。
つまり、二人ふたりきたのほうをまわっているうちに、ジャックはひがしほうたずねてったらしいのだ。
ブリアンはじ一同いちどうではない。あのジャックが、この零度以下れいどいかさむさのなか湖上こじょうにさらされていたら、十中八九生じゅっちゅうはっくいきてかえことはできない。きりふかうえに、はや暮色ぼしょく湖上こじょうおそってた。
いまかんがえもきて、最後さいご手段しゅだんをとるようになった。のろしをげることになったのだ。枯葉かれはあつめて浜辺はまべげ、それにをつけようとした。そのときゴルドンは
て、みんな、あそこになにうごいているものがあるぞっ!」