十五少年漂流記(20)

朗読「十五少年5-5.mp3」12 MB、長さ: 約 13分 01秒

10.伝書鳩でんしょばと総督そうとく選挙せんきょ

あやしいしろてんなにか?くもか?それともやまか?
疑問ぎもんは、いつまでも疑問ぎもんとしてのこった。少年しょうねんたちのだれにも見当けんとうはつかなかった。で、ともかくまえとおりに冬篭ふゆごもりをつづけることになった。不思議ふしぎにも、ブリアンは今度こんど遠征えんせいからかえったあと、がらりと人柄ひとがらわってしまって、まえのように仲間なかまともはなさなければ、おとうとジャックともできるだけかおわせることをけよう、けようとしていた。しかし、みんなのための努力どりょくは、以前いぜんにもして熱心ねっしんおこなった。そして困難こんなん危険きけんなことがあると、自分じぶんからめいじて、ジャックにたらせるようにした。
ゴルドンははやくもこのことにがついた。そしてブリアンにわけたずねようとしたが、ブリアンはたずねられるのをおそれるように、はなしをそらすのであった。それがますますゴルドンの注意ちゅういいた。をつけてみればみるほど、たしかに兄弟きょうだいあいだにはなに人知ひとしれぬ重大じゅうだい秘密ひみつ約束やくそく出来上できあがっているようにえる・・・。ある、ウイルコクスは、ニュージーランドがわさけのぼっていくのを発見はっけんした。そこであみおろして毎日獲まいにちとっているうち、おもったよりたくさんとれたので、早速さっそくそれを塩漬しおづけにして、貯蔵ちょぞうすることにした。そのため、かれらはスローわん製塩所せいえんじょもうけた。その方法ほうほうは、浜辺はまべ四角しかくおけつくり、天日てんぴちから水分すいぶん蒸発じょうはつさせ、そのおけそこにたまるしおをとるという方法ほうほうであった。一同いちどう努力どりょくは、これにも成功せいこうしたのであった。
ドノバンは、ウエッブや、ウイルコクスや、猟犬りょうけんフワンをれて、よくりょうかけた。沼地ぬまちには、かもなどがあつまっていたので、獲物えものはたくさんあった。はまヒバリやあおサギは食料しょくりょうにはならなかったが、つばさあかべにヅルだけは、非常ひじょうあじのいいとりである。しかし、姿すがたえても用心深ようじんぶかとりで、とうとう一羽いちわもとることが出来できなかった。こういうあいだも、毎日まいにち勉強べんきょう中止ちゅうしするようなことはなかった。毎週まいしゅう討論会とうろんかいには、ドノバンがれいによって、いつもヒーローだった。
ところが、ここにひとつの重大じゅうだい問題もんだいがあった。それは、しま総督そうとくゴルドンの任期にんきが、あとげつできれる。したがって、一同いちどうふたた選挙せんきょ手続てつづきをんで、新総督しんそうとく選挙せんきょしなければならない。
ドノバンは新総督しんそうとく推薦すいせんされるものこそおれであろうと、自分じぶんしんじ、ドノバンの仲間なかまの、ウイルコクスやウエッブ、グロースの三名さんめいもドノバンにむかっては、「きみのほかにゴルドンにいで新総督しんそうとく椅子いすすわるべきものはない」といっていた。ところが、それは大変たいへん誤算ごさんであった。たしかにドノバンはゴルドンに年齢ねんれい技量ぎりょうとをっている。しかし、しいことに人望じんぼうがなかった。そのうえちいさいたちはドノバンをいていないばかりか、いま総督そうとくのゴルドンにさえ、じつ多少たしょう不平ふへいっていた。というわけは、ゴルドンがおさめた一年いちねんかんは、公共こうきょう利益りえきをはかるのが急務きゅうむだったので、規律きりつがあまりにも厳重げんじゅうだった。ちいさい子達こたち着物きものよごしたり、ボタンをなくしたり、くつやぶったりすると、ばつはとてもおもくて、ときには食事しょくじらしたり、またべつなときには外出禁止がいしゅつきんしというように、ビシビシとやってゆるすことがなかった。実際じっさいそうでもしなければ、かれらのやんちゃはおさえられなかったのだが、ちいさい子達こたちはそれをひどくうらんで、「ああ、あの親切しんせつなブリアンが総督そうとくだったらなあ!」とおもわないものはなかったのだ。もっとも、少年しょうねんたちにも一日いちにちのうちに何時間なんじかんかはあそびの時間じかんはあった。つまりかれらがスポーツをたのしむ運動時間うんどうじかんだった。かれらはそのあいだにのぼったり、みずおよいだり、レースをやったり、棒飛ぼうとびをしたりして、あそんでいる。
するとあることひとつの事件じけんこった。それは四月二十五日しがつにじゅうごにち午後ごごのことで、ドノバン、ウエッブ、ウイルコクス、グロースの四人よにん一組ひとくみとなり、ほか一組ひとくみはブリアン、バクスター、ガーネット、サービスの四人よにんと、こうくみけて、輪投わなげのあそびをしていた。輪投わなげというのは、平地へいちうえ二本にほんてつぼうてておいて、三四さんよんメートルはなれたところからをそのぼうあそびである。ぼうにはまると、二点にてんぼうてると一点いってんとして計算けいさんし、勝敗しょうはいめるのである。
そのかれらは二度戦にどたたかったが、はじめは七点ななてんでブリアンのくみち、つぎ六点ろくてんでドノバンのくみった。そこで最後さいごのこの一番いちばんが、今日きょう勝敗しょうはいかれ決勝けっしょうとなった。各組かくくみとも二点にてんかぞえて、二対二にたいにたたかいはすすみ、最後さいごにいよいよドノバンと、ブリアンがひとつのによって、勝敗しょうはいまるところまでった。
「ドノバンくん今度こんどきみばんだ。しっかりたのむよ。きみ輪一わひとつで勝敗しょうはいまるんだよ」と、ウエッブが元気付げんきづけてさけんだ。ドノバンはくちむすび、ひからせ、しばらくねらいをさだめると、「やっ!」という掛声かけごえともに、けた。はほとんどぼうにはまろうとしたが、しくもかえり、のふちでぼうはじいてちてしまった。「しまった!けた!」と、グロースがさけぶと、
「なに、これでまた一点いってんだ。てきてなかったら、こちらのちだ」とウイルコクスが応援おうえんする。
こちらのくみでは、サービスが、「ブリアンくん、しっかり!」
ブリアンはただだまってうなづいただけだった。やがて足場あしばをはかり、ねらいをさだめてげた。ぼうなかへカチンとはまった。サービスは小躍こおどりして、
二点にてん合計七点ごうけいななてん僕等ぼくらくみったよ、ばんざあい!」
すると、むこうのドノバンが、「った、いま勝負しょうぶには異議いぎがある」
「どうして?」バクスターがかえすと、
「でも、そうじゃないか」と、ドノバンはブリアンのそばへけてて、「ろよ、ブリアンくんは、こんなにずるい」「なに!ぼくがずるい?」ブリアンはさっと顔色かおいろえた。
「でもそうじゃないか、きみげるとき、ラインのそとあししていた」
「いやちがう」サービスはくちはさんで、「それはドノバンくん見間違みまちがいだよ。ブリアンくんあしは、いつもラインのなかにちゃんとしていた!」
「そうだとも」とブリアン。「てみなよ、ここにちゃんと、ぼくくつのあとがあるじゃないか、そんなうそうものじゃない」
なにうそをつくって?」ドノバンはこしをあててった。そのうしろにはウエッブ、グロースがって、「やれ、やれ」とってけしかけようとする。
こうなると、ブリアンの仲間なかまも、けていない。サービス、バクスターは、ブリアンに加勢かせいしようとする。みるみる、ブリアンのかおあかくなったが、なにおもしたか、言葉ことばやわらげて、「ドノバンくんきみぼく名誉めいよきずつけたうえ、そのうえ喧嘩けんかるつもりか?」
「それがどうした?きみぼくがこわいのか?」
「なに、ぼくがこわがると?」ブリアンはこぶしかためた。
「そうだ、きみ臆病者おくびょうものだっ!」
「なに、臆病者おくびょうものだ?」さすがのブリアンも、今度こんど我慢がまんすることができなかった。
二人ふたりびかかって、大喧嘩おおげんかになった。
あやうくどちらかがきずつこうとするところへ、こえいてけつけてたのは、総督そうとくゴルドンだった。
二人ふたりあいだひろげて、
「ブリアンくん!ドノバンくんった!」とかれさけんだ。
「でも、かれぼくをうそつきだとった。」ドノバンがさけぶ。
「でも、きみぼくがごまかしたとった。臆病者おくびょうものだとった。」
ゴルドンはおおきなこえで、
「ドノバンくんぼくはブリアンくんけっして喧嘩けんかなどする人間にんげんじゃないということを、よくっている。こんなことになったのには、なに理由りゆうがあるだろう?理由りゆうがなければ喧嘩けんかこらない」
「ははは!そりゃまたありがとう」とドノバンはきゅうややかにわらって「ゴルドンくんきみはまたれいによってぼく悪者わるものにするんだね、いや、ありがとう!ぼくきみ行為こうい感謝かんしゃするよ」
ぼくなにきみ悪者わるものにしちゃいない。だが、ぼく提督ていとくとして、不法ふほう喧嘩けんかをすることは断然禁だんぜんきんじる。ブリアンくんきみ洞穴ほらあなかえりたまえ、ドノバンくんはどこかへって、気持きもちがしずまるまでかえってこないでくれ」
それをくと、ウエッブ、ウイルコクス、グロースの三人さんにんのぞくほかの一同いちどうは、
「そうだ、そうだ、ゴルドンくんうことはただしい」と一斉いっせいさけんだのであった。
それで、そのよる、ドノバンはどこをぶらついていたか、一同いちどうねむりにつこうとするころになってやっとかえってきた。そしてブリアンのことについては一言ひとことわず、翌日よくじつからは一同いちどうとも冬篭ふゆごもりの用意よういしたがった。けれど、憤怒ふんぬじょうは、あきらかにかれ動作どうさあらわれていた・・・。
五月ごがつはいってからめっきりさむくなってきた。そして、ひるよる洞穴ほらあななかはストーブをくようになった。鳥達とりたちあたたかい土地とちもとめて、このるらしかった。そうおもうと、少年しょうねんたちは、数十羽すうじゅうわつばめらえて、一羽一羽いちわいちわ、そのあご一同いちどう漂流ひょうりゅうした顛末てんまつと、現在げんざい場所ばしょ生活せいかつ有様ありさま簡単かんたんしるして、「この手紙てがみひろったかたは、すみやかにニュージーランドの首都しゅとオークランドへおらせくださるよう、おねがいします」といたちいさな紙切かみきれをむすびつけた。そして、つばめをみんながしてやった。