十五少年漂流記(19)

朗読「十五少年5-4.mp3」13 MB、長さ: 約 13分 45秒

だが、こうしているあいだも、一同いちどうすこしも活動かつどうゆるめなかった。まえから宿題しゅくだいになっている家族湖東海岸かぞくこひがしかいがん探検たんけんを、一日いちにちはや決行けっこうしようというはなしがった。
これは探検たんけんするばかりではない。あそこからひがし地平線ちへいせん模様もよう展望てんぼうして、りくがあるかないかも、たしかめようというのが、大切たいせつ目的もくてきであったのだ。
そこで、ブリアンはゴルドンに提案ていあんして、
冬篭ふゆごもりの準備じゅんび必要ひつようだが、一日いちにちはや陸地りくちつけて、母国ぼこくかえることをかんがえなければならない」とうと、ゴルドンも、
「まったくきみのいうとおりだ。では、早速探検隊さっそくたんけんたい組織そしきして出発しゅっぱつさせよう。きみってくれるだろう、ほかだれ四五人選しごにんえらんで、一緒いっしょってみてくれないか」
五六名ごろくめいはあんまりおおすぎる。それにあのボートはちいさいから、遠征委員えんせいいいんはせいぜい二人ふたり三人さんにんでいいだろう」「同感どうかんだね、ではきみだれれてくつもりか?」
「モコーをれてこう。モコーはふねをこぐことが上手じょうずだし、ぼくにも自信じしんがある。だから、順風じゅんぷうときげて、かぜければかい使つかっていけば、みずうみ横切よこぎって東湾ひがしわんくのはわけないことだ」
「モコーと・・・それからもう一人ひとりだれれてく」
ぼくおとうとのジャックをれてきたい。近頃ちかごろジャックの様子ようすがますますおかしい。どうも他人たにんにはえない重大じゅうだい秘密ひみつがあるようながする。今度こんど探検たんけん利用りようして、その真相しんそうただしたいとおもう。」
「よかろう、そうしたまえ」と、ゴルドンはこころよゆるしてくれた。よろこんだのはモコーで、いつも洞穴ほらあななかにくすぶって炊事すいじばかりしていたかれも、ひさしぶりで野外やがいられるのだ。おとうとジャックも、あに一緒いっしょくのをよろこんだ。ブリアンは早速さっそくボートを検査けんさし、破損はそんしている場所ばしょ修繕しゅうぜんし、スローごうからって三角帆さんかくほをこれにけた。用意ようい出来できたので、ライフルふたつ、ピストル三丁さんちょう火薬若干かやくじゃっかん毛布数枚もうふすうまい五日分いつかぶん食料しょくりょうんだ。出帆しゅっぱん二月四日にがつよっかあさだった。
ドノバンだけは、自分じぶんけないのが不平ふへいらしく、ぶつぶつっていた。
出帆しゅっぱんしてすぐ、ニュージーランドがわから家族湖かぞくこした。はじめはってったが、一時いちじごろからかぜおとろえたので、あとはモコーとブリアンとが、かいあやつった。ジャックはかじをとった。
北東ほくとうむかってくと、四時よじごろ、東岸とうがん樹影こかげがはるかにしてきた。と、おもううち、六時ろくじにはボートははやくも東岸とうがんにあるおかしたいた。おかまつおおわれている。おかをめぐってくと、一本いっぽんかわくちにでる。「ああ、これは、ボードウインの地図ちずいてあるかわだな」ブリアンがうと、
「そうです、このかわなんにしましょうね、ブリアンさん」とモコーがう。
「そうだな、東方川とうほうがわというにしよう」
で、そのよる一同いちどうボートをきしにつないで野宿のじゅくをし、翌朝六時よくあさろくじしおとき利用りようしてうみのほうにむかってボートをいだ。ボートはかなりのはやさでうみむかってはしった。このかわはニュージーランドがわのようにひろくなく、土手どてうえにはしげっていた。そのなか十四五じゅうしごセンチの円錐形えんすいけいをつけたが、点々てんてんじっている。ブリアンはゴルドンのように植物しょくぶつ知識ちしきはないが、いつか標本ひょうほんで、それがストーンパイルというであることをった。そのべることも出来できるし、あぶらることもできるのだ。
土手どてうえには、ダチョウや、ウサギがあそんでいた。二頭にとうのラマがひょっこりかおしたりなどした。十一時頃じゅういちじごろから空気くうきなんとなく潮気しおけかんじる・・・とおももなく、青々あおあおとしたうみ水平線上すいへいせんじょうあざやかにあらわれた。ボートのながれは一時間二いちじかんにキロメートルの速力そくりょくはしったから、東方川とうほうがわながさはおよそじゅっキロメートルであったろう。
このわんはスローわんとはちがって、浜辺一帯はまべいったい砂地すなちで、その浜辺はまべおおきないしがごろごろとよこたわっていた。ところどころに洞穴ほらあながある。もしスローごうがはじめにここに漂着ひょうちゃくしたならば、少年しょうねんたちはもちろんここを住居じゅうきょとしたにちがいない。モコーがおき見渡みわたしてみると、ただ広々ひろびろとした大洋たいようで、ひとつの帆影ほかげすこしのりくかげえない。もとよりかなら陸地りくちがあるものと期待きたいしてたわけではないが、とにかく失望しつぼうせずにはいられなかった。そこで、そこに名前なまえをつけて、欺瞞湾ぎまんわんとした。
ブリアンはきしにボートをつないでおいて、二人一緒ふたりいっしょ上陸じょうりくした。あたりの模様もよう調査ちょうさすると、わずか数百すうひゃくメートルのあいだ十個以上じゅっこいじょう洞穴ほらあながあった。「いい住居じゅうきょがいくらでもあるな」と、ブリアンはつぶやくなか、くまおおきないわつけた。それで、これを大熊岩おおくまいわ名付なづけた。
そののぼってみると、たかさは三十さんじゅうメートルにちかく、あたりの様子ようす一目ひとめることができる。西にしかさなったはやしが、家族湖かぞくこをかくし、みなみ一面いちめん大砂漠だいさばく起伏きふくしている。きたがった浜辺はまべ、そのなかみさきがあるだけである。それからきたはまた一帯いったい砂浜すなはま。さらに望遠鏡ぼうえんきょううつして、ひがしほうながめると、すっきりとれた空気くうきとおって、とりかげもよくえた。
「おや、あれはなんだろう?」モコーが不意ふいさけんだ。
モコーのゆびさすほうをると、なるほど、北東ほくとうほうみずてんとがせっするところにひとつの白点はくてんえる。じいっとると、くもでもないらしい。なぜなら、ひとつの場所ばしょまってうごかないから。
くもでないとすると、やっぱりやまかなあ?だけど、やまのようにはえないが、やっぱりくもかなあ?」
ブリアンは、じいっと見入みいった。いたくなる程見入ほどみいった。
つめるうちに、がかすんでくる。おりから、太陽たいよう西にしかたむいて、つるべとしにうみなかちる。うみはきらきらとかがやいて、彼方かなたてんえなくなってしまった。
くもか?やまか?それとも、うみなみ太陽たいようひかり反射はんしゃしたのではなかろうか?」
三人さんにんうたがいをいだきながら、ボートのところかえってきた。
夕食ゆうしょくんだあと、モコーはストーンパインのるために、きしがってった。しばらくしてかえってきてると、ボートのなかにはブリアン兄弟きょうだい姿すがたえない。
モコーは、ふとみみてた。と、しげったあいだから、すすりきのこえと、おこってののしこえとが、みだれてこえてくる。
「おや?」モコーは、くらがりにひからせた。こえはまごうことないブリアン兄弟きょうだいだった。
「どうしたんだろう?兄弟きょうだいげんかをするようなお二人ふたりじゃないが・・・」モコーは不審ふしんおもいながら、足音あしおとぬすんで、しのった。ると、ジャックはブリアンの足元あしもとげて、かたふるわせて、はげしくしている。夕闇ゆうやみはあたりをつつんで、二人ふたりはモコーがちかづいてきたのもらなかった。
そこで、モコーは、ジャックがなにあに懺悔ざんげしたか、またかれがどんなつみおかしているかを、すっかりいてしまった。モコーはいてはいけないことをいてしまった。「はっ」としてきゅうかえしてかえろうとしたが、おそかった。「馬鹿者ばかもの!じゃあ、今日きょうみんながこのしまながされたその原因げんいんは、みんなおまえだなっ!」ブリアンのこえはげしいいかりにふるえる。いまにもたおそうとするような剣幕けんまくだ。
ゆるしてくださいにいさん、ゆるしてください。ぼくつみを・・・」ジャックはかおせてすすりく。
ブリアンは口惜くやしそうに、「じゃあ、おまえがいつもみんなとかおわせるのをおそれていたのも、そのためなんだな・・・みなは、けっして、けっして、おまえゆるしはしないぞ!おまえはこのことを秘密ひみつにして、つみつぐなうことをかんがえなければならないぞ!」
きをしているモコーはがとがめてならなかった。かれは、兄弟きょうだいのこの不幸ふこう秘密ひみつって、非常ひじょう後悔こうかいした。うっかりいてしまったために、くるしんだ。
数分後すうふんごに、三人さんにんがボートのなかうと、モコーはまずった。
「ブリアンさん、わたしわるいことをいたしました。わたし、おはなしを、ついきしてしまいました」
ブリアンのかおは、きゅうあおざめてまった。
「え?じゃあ、おまえはジャックがぼくはなしたことを?」
「はい・・・どうか、わたしあやまちをゆるしてください」
「いや、ゆるせというのは、こちらのことだ」ブリアンはあきらめたように、
「だが、おまえべつとして、みんなは、きっと、きっと、ジャックのつみゆるさないだろう」
「でも、わたしがしゃべらなければ、このことは、ほかみなさんにはけっしてれることはないでしょう。わたしだれにもはなしません。このことは、三人さんにんだけの秘密ひみつにしましょう」
「ありがとう!モコー!僕等ぼくらは・・・僕等兄弟ぼくらきょうだいは・・・」ブリアンはひしとモコーのにぎった。そして、いて、れいった。・・・おとうとのために、自分じぶんのためにも。
さいわい、そのよる満月まんげつで、あたりは真昼まひるのようにあかるかった。おりからしおって、まもなく、三人さんにんちからなくかえることにした。さいわかぜがあったので、をあげ、フランスどう目指めざして、一直線いっちょくせんみずうみうえすすんだ。そのあいだも、おとうと懺悔ざんげいたブリアンは、しおしおとしずんで、沈鬱ちんうつかおをしていた。モコーもまた、くちをきかなかった。三人さんにん三様さんようおもいをいだいて、だまっていた。
みずかいおとばかりが、水面すいめんひびいてっていた。